2022 Fiscal Year Research-status Report
Literature and Nationalism in " People without a Nation State": A Comparative Study of Kurdish and Uyghur
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21K12421
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
能勢 美紀 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部, 海外研究員 (70866798)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺本 めぐ美 津田塾大学, 国際関係研究所, 研究員 (40788981)
熊倉 潤 法政大学, 法学部, 准教授 (60826105)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | クルド / ウイグル / 所蔵機関調査 / 出版物 / 言説分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、クルド・ディアスポラの多いヨーロッパ各地のクルド関係機関を訪問し、関係者へのインタビューや出版・所蔵状況調査を行った。具体的にはフランスのパリ・クルド研究所、ベルギー・ブリュッセルクルド研究所、スウェーデンのクルド図書館を訪問した。これら機関への訪問により、すでに絶版となっている書籍や、非営利出版物等の貴重なクルド関係資料を入手することができた。入手した資料をもとに、目録・解題の作成をすすめている。また、ヨーロッパへの移住・亡命者の第一世代にあたるクルド関係組織の関係者への聞き取り調査によって、1980年前後のヨーロッパにおけるクルド語出版の隆盛とクルド文化を発展させるための機関の設立が相次ぎ、国際的な関心が高まったこと、その一方で、2000年代以降、比較的自由な出版が可能になった後に、収集と保存について課題を抱えていることをがわかった。これは、クルド人にナショナル・ライブラリーが存在しないことと大きく関係しており、本課題で比較対象としているウイグル人についても今後、課題として浮上してくる可能性が高い。現在ウイグル人に対する国際的な関心はかつてないほどに高まっており、情報発信も盛んに行われているが、それらを体系的に収集・保存していく体制が整っているのかという点について、今後検討すべきと思われた。 他に、中国からの亡命ウイグル人が多数居住し、出版活動が盛んに行われているトルコへの出張も行った。この際、ウイグル系書店および団体を訪問し、関係者から貴重な談話を聞くことができたほか、ウイグル系書店からは資料を購入することができた。 昨年度以前に入手した資料の分析もすすめており、出版物と民族運動の共鳴関係について、研究会での議論を中心に検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は新型コロナウイルス感染症が落ち着いたことから、2021年度に実現できなかったトルコ出張をはじめ、クルド・ディアスポラの多く住むヨーロッパ各地のクルド関係機関への訪問・調査を行うことができ、有用な資料および情報を収集することができた。これら出張をはじめとして得られた情報をもとに、目録・解題の作成が順調に進んでいるほか、資料の内容と民族主義運動との関係性に関する分析も随時進めている。研究者間の研究の連携や議論も、2回の研究会開催等を通して適宜行っており、これらの活動をもとに、いくつかの成果を公開することもできている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度行った聞き取り調査や収集した資料をもとに、出版物と民族主義運動との関連性の分析をすすめる。特に、収集した資料から作成したクルド関係資料の目録が、1000冊弱と充実してきている。この目録をもとに、出版地や出版年の分析を行い、クルド関係資料の出版状況を明らかにしていく。さらに、ここで判明した出版状況と、各地のクルド民族主義運動の状況を比較することで、出版物と民族主義運動との関連の一部が見えてくるのではないかと期待される。あわせて、資料の内容分析をもとにした民族主義運動との関連についても、引き続き調査していく。
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Causes of Carryover |
2022年度後半には新型コロナウイルス感染症の収束に伴い、現地調査を複数回行ったものの、前半期に予定していた現地調査の一部を行うことができなかったため、次年度使用額が生じることとなった。2023年度以降、現地調査を中心に使用することを計画している。
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Research Products
(4 results)