2022 Fiscal Year Research-status Report
「よそ者」と「はれ者」による内発的復興のアクションリサーチ
Project/Area Number |
21K12427
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Research Institution | Fukuyama City University |
Principal Investigator |
宮前 良平 福山市立大学, 都市経営学部, 講師 (20849830)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川端 亮 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (00214677)
渡邉 敬逸 愛媛大学, 社会共創学部, 准教授 (30711147)
佐藤 功 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 教授 (40833760) [Withdrawn]
松村 暢彦 愛媛大学, 社会共創学部, 教授 (80273598)
松永 和浩 大阪大学, 適塾記念センター, 准教授 (90586760)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 関係人口 / よそ者 / はれ者 / 災害復興 / 日本酒 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、過疎地域の復興において重要なアクターとなる関係人口に焦点を当て、従来の関係人口論では不足している以下の3点の解明を目的としている。①災害後の関係人口の広がりを把握し、外部者ネットワークの構造を量的に明らかにする。②地域住民と外部支援者との長期的なかかわりを質的に記述し、地域の変容過程を明らかにする。③外部者(よそ者)の介入によって地域内で不可視化されていたアクター(はれ者)を巻き込んだ地域の主体化の過程をアクションリサーチの手法を用いて明らかにする。 これまでの研究では主に②のインタビューならびに③のアクションリサーチを行ってきたため、その2点について詳述する。 ②については、フィールドである愛媛県西予市野村町で2018年の西日本豪雨での復旧復興にあたった住民ならびに被災された方々にインタビューを行い、被災後のタイムラインを整理し、それぞれのフェーズでの復興感を聞き取った。また、各フェーズでの外部支援者とのかかわりについても確認した。 ③については、2020年から行ってきた一般社団法人NEOのむらの活動を継続し、2022年度一年間で4回の講座をおこなった。なお、この講座は愛媛県主催のえひめ南予きずな博の一環として「がいなんよ大学」と銘打っておこなった。また、日本酒「緒方洪庵」プロジェクトも3年目を迎え、今年度からは会員制度も取り入れ、お酒を媒介としたネットワークづくりに寄与している。これらの実践をもとに、さまざまなアクターを巻き込んだ地域復興のポイントが整理されつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題2年目にあたる2022年度は、主に、インタビュー調査や、現地での復興にむけたアクションリサーチを行った。それぞれについて詳細に記す。 インタビュー調査については、5名の方を対象に行なった。市役所職員として復興施策に携わった方や、豪雨で被災した地元の商店街の方々に話を伺った。その結果、災害後から現在にいたるまでの市としてのタイムラインと被災された方それぞれが感じる復興感の変化に差異があることがわかった。また、野村ダムの放水についての葛藤についても聞き取ることができた。外部支援者については、野村にもともと備わっている「手弁当の文化」が発揮され、受け入れがスムーズであったこと、その後の移住促進につながっていることが示唆された。 アクションリサーチについては、計5回の「がいなんよ大学」の実施に加え、日本酒「緒方洪庵」の販促を通じて外部とのネットワークも広げることができた。「がいなんよ大学」では、関係人口・SNSを通じた外部発信・高校生によるまちづくり・復興支援をそれぞれテーマとした市民講座を開いた。これらの講座では、県外からの大学生も運営に携わっており、「よそ者」「若者」とのつながりが活かされた。また、一般社団法人NEOのむらの活動の一環として行っている日本酒「緒方洪庵」の醸造では、2022年度から会員制度を取り入れ、日本酒というモノを媒介とした関係人口の創出が進んだ。実際に、2023年3月には、会員のうち10名ほどが野村に訪れ、現地の人との交流を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題最終年度である今年度は以下の計画で研究を進める予定である。 ①2018年の西日本豪雨水害から5年が経過する。被災地では復興が進むと同時に、そこから心理的に取り残されたと感じる人も少なくない。それらを分かつ要因は何か。西予市に在住の被災者を対象にしたアンケート調査を行い、復興感と関連の強い要因を分析する。また、地域での社会的なつながりおよび、災害を契機とした外部者とのつながりが復興感に与える影響についても定量的に明らかにする。 ②西日本豪雨に被害が甚大であった西予市野村地域の住民を対象に被災後の5年間をふりかえるインタビュー調査を行う。その際に中越地震からの復興過程の調査で用いられた復興曲線をインタビューツールとして用いる。復興曲線によって主観的な復興感の変化が分析可能となる。また、野村地域やその周辺地域に特有の文化である「サシアイ」(酒席で酒を酌み交わす手法)に着目し、サシアイが復興感に与えた影響ならびにサシアイが盛んな地域とそうでない地域の比較、サシアイが得意な人と苦手な人の比較等を通じて、地域文化が復興に与える影響も調査する。 ③本研究課題のキーパーソンである方へのライフヒストリー調査を行う。野村町の歴史を一人の人間の生活史から明らかにすることで、災害前の野村町の歴史文化を整理し、それが災害後にどのように変容したのかを分析する。また、災害前後での住民である内部者と外部者のかかわりの変遷も明らかにする。
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Causes of Carryover |
2022年度は新型コロナウイルスの影響でフィールドワークが十分にできない期間があり、そのため、主に旅費の項目で次年度への繰り越しが生じた。繰越分は、2022年度に実施できなかったフィールドワークの旅費等にあてる計画である。
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Research Products
(3 results)