2021 Fiscal Year Research-status Report
A Study of Contemporary Black Freedom Movement: Black Lives Matter Movement and Carceral States
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21K12442
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Research Institution | Japan Women's University |
Principal Investigator |
藤永 康政 日本女子大学, 文学部, 教授 (20314784)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 黒人 / 人種 / アメリカ合衆国 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、ブラック・ライヴズ・マター運動(以下BLMM)をブラック・パワー運動との関係から実証的に検証し、ポスト公民権時代のアメリカ合衆国で「人種」が果たす役割を明らかにすることである。また本研究は、暴力とジェンダーの問題を分析のなかに組み込みつつ、ブラックパワー運動の歴史的な意義を明らかにしながら、公民権運動・ブラックパワー運動史研究にBLMMを統合することを目論んでいる。 2021年度の研究計画は、この計画のうち、ブラックパワー運動の歴史的な意義を明らかにするという点については、先行研究とこれまでの科研研究で蓄積してきた史資料を活用することで大きく前進させることができた。予定していた雑誌『思想』での連載は、〈黒人自由闘争〉の歴史を総括を目的に、2021年4月、10月、2022年2月と順調に公刊が進み、2022年6月をもって連載を終えるという最終局面が見えているところにある(最終回の原稿は2021年度に執筆し、すでに入稿済みである)。また、学術研究書であり、ブラックフェミニズムとBLMMの関係を描き出した、Barbara Ransby著Making All Black Lives Matterの日本語訳も、当初からの予定に従い、2022年2月に彩流社より公刊し、これまでのところ、日本の研究者のあいだでも好評を得ている。これから届くはずの本訳書に対する批評は、そのまま本研究を今後の深化に寄与するであろう。 しかしながら、当初計画にあげていた米国でのリサーチは、ブラック・パンサー党の結党記念集会でインタビュー調査はもとより、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う海外渡航制限・移動規制のために、そもそも渡米して調査を行うことが不可能となり、まったく進めることができなかった。現地調査に関わる部分は、本年度以後に注力すべき最大の課題としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
本研究の進捗状況については、残念ながら「遅れている」という判断をせざるを得ない。本研究は、これまでの科学研究費の助成を受けた研究の資産を継承しつつ、これらの研究を総括し、加えて新たにアメリカでの史資料調査を行うという軸があった。このうち前者は順調に進行した。しかし、後者について、本研究は、予め感染症のことを計画のなかに織り込み、アメリカでの調査を2021年度後半期以後としていたのにも関わらず、かかる対策も長引くコロナ禍のなかでは意味なきものとなってしまった。海外渡航制限・移動規制のために、アメリカ合衆国への入国、さらには現地についてからの移動やインタビューといったことは不可能であった。この点に関しては、2022年度以後の研究計画の最重要課題としたい。
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Strategy for Future Research Activity |
上に報告したように、新型コロナウイルス感染症対策でアメリカ合衆国での調査を行うことができず、本研究の進捗は大きく遅れている。それゆえ、その部分を今後の研究のなかで挽回しなくてはならず、以下の通りに研究計画を立て直すこととした。 2021年度に渡米して行うことを予定していた調査は、ブラック・パンサー党結党大会に参加し、60年代のアクティヴィストたちに聞き取り調査を行うということである。結党大会参加という機会(結党大会自体は開催された模様である)は失われてしまったが、本研究へのエフォート率を上げることができ、米国に滞在する時間も長くなる2023年度に、2021年度に予定していた調査を組み込むこととする。この点を除くと、もちろん感染症対策が緩和に向かっている現状が続けばの話ではあるが、本研究は、基本的に研究計画調書に記した方法と計画に則って進めることが可能と考えている。以下に確認としてその詳細を記す。 2022年度:アメリカでの文書リサーチを開始する。調査を予定している場所は、デトロイト、シカゴ、ニューヨークであり、一九六〇年代から70年代初頭の犯罪取締りに関する黒人市民の関与について調査を行う。 2023年度:海外研究の期間を利用し、上の研究をさらに重点的に進める。2021年度に予定していた調査はこの年度に行う。 2024年度:上の調査に基づき、研究成果の発表に取り組む。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症に伴う海外渡航・移動制限のために、アメリカ合衆国での調査が不可能となったため。2021年度に生じた次年度使用額のうち旅費としての使用を計画していたものは、そのまま2022年度以後の調査旅費として活用する予定である。また、調査時に使用することを目的に購入する予定にしていた物品も未購入であり、それも2022年度以後に物品費として使用する予定である。
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