2021 Fiscal Year Research-status Report
Examining separability of crop boom and land grabbing in developing countries: a case study of the melon boom in Myanmar
Project/Area Number |
21K12445
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Research Institution | Gakushuin University |
Principal Investigator |
久保 公二 学習院大学, 国際社会科学部, 教授 (00450528)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 商品作物ブーム / 土地収奪 / ミャンマー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ミャンマーの園芸作物輸出ブームにおける農地の利用と所有の変化を検証するものである。途上国の各地で商品作物ブームにより農地の収奪が起こっているのとは対照的に、ミャンマーの中国向けメロン輸出ブームは、農地の収奪を伴わず、小農も包摂しながら拡大してきた。ミャンマーでメロンの栽培が急増するなかで、農地の利用と所有がどのように変化してこの非在来商品作物の増産に至ったのか、その仕組みを本研究は明らかにする。 本研究の1年目にあたる本年度は、これまでのミャンマーでの予備的調査をもとに中国向けメロン輸出の概要を記したKubo, Pritchard, and Phyo (2021)を公刊した。ここでは、中国向けフルーツ輸出サプライチェーンが、次の二つの特徴を持つことを示した。第一に、農産物の品質の差別化が限定的な中国の小売市場の特性を反映して、卸売市場がサプライチェーンの中心を占めている。品質の差別化が限定的な卸売市場の取引には、仲買人(ブローカー)を介して零細な生産者も参入できる。第二に、メロン栽培では、農地のレンタルが盛んである。連作障害に弱いメロンの栽培には輪作が適している上に、メロン栽培の高い期待収益で農地レンタル費用がまかなえる。農地レンタルは、メロン栽培の急拡大を後押ししいているが、その一方で、持続的な土地利用の配慮を欠く借り手が化学肥料・農薬や農業用プラスチックフィルムを多用して環境汚染を起こしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では、中国向けメロン栽培が盛んな産地(ミャンマー・サガイン管区チャウンウー郡)の農村を選んで悉皆調査を行い、家計データを収集して次の二点を明らかにしてゆく。第一は、メロン生産者ごとの生産規模拡大プロセスである。生産者がメロン栽培に必要な農地や資金をいかに調達して、どのようなスピードで生産規模を拡大しているのかを読み解く。第二に、メロンを栽培する世帯と彼らに農地を貸す世帯の違いに着目する。期待収益が高いが価格変動リスクも高いメロン栽培に参入する世帯と、リスクを取らずに農地をレンタルに供給する世帯の違いを明らかにする。 初年度には悉皆調査を行う農村の選定にミャンマー現地調査を予定していたが、新型コロナウィルス感染症拡大に加えて2021年2月に起こった軍事クーデタのため、調査を延期している。2022年度初めの時点で、ミャンマーの政情により、現地調査の目途は立っていない。
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Strategy for Future Research Activity |
ミャンマー現地調査の目途が立つまでは、文献サーベイを軸に研究を推進する。本研究はメロンのような単年性作物の輸出ブームを取り上げているが、東南アジアの作物ブームの先行研究では、アブラヤシやゴムなどの永年性作物が注目される傾向が強かった。作物ブームの過程は、作物の農学的な特徴にも大きく左右されるので、本研究ではミャンマーのメロン輸出を念頭に、単年性作物あるいはそれに近いバナナの作物ブームについて文献サーベイを行う。この文献サーベイをとおして、ミャンマーのメロン輸出ブームの、作物による特徴とミャンマーの政治経済環境の影響の識別を試みる。 この文献サーベイはミャンマーでの調査再開に向けた準備としてばかりでなく、文献調査型の論文の執筆も兼ねることで、研究成果の拡充を図ってゆく。
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Causes of Carryover |
2021年2月に起こった軍事クーデタの影響でミャンマーへの現地調査を延期したため、予算に繰り越しが生じている。2022年度に入っても政情不安が続いているためミャンマーへの渡航の目途は立っていない。 2022年度は文献サーベイを軸に研究を推進するための資料の購入と、途上国の作物ブームについての国内外の研究者との交流のための旅費に、繰り越した予算をあてる予定である。
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