2022 Fiscal Year Research-status Report
独語圏の観光事業に見る「ベートーヴェン・イヴェント」の沿革に関する文化史的研究
Project/Area Number |
21K12450
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
小宮 正安 横浜国立大学, 大学院都市イノベーション研究院, 教授 (80396548)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 観光史 / 文化史 / 社会史 / 西洋史 / 芸術史 / 音楽史 / 思想史 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、コロナ禍のために完全に遂行できたとは言い難い状態であった2021年度の研究予定のフォロー、即ち19世紀半ばから今日に至る「ベートーヴェン・イヴェント」の歴史を俯瞰し、文化史的にいかなる分析方法が可能であるのかについて、「ベートーヴェン・イヴェント」の歴史的一次資料の収集を通じ、ドイツ語圏がヨーロッパ有数の観光地並びに観光立国を擁するにあたり、「ベートーヴェン・イヴェント」がいかなる役割を果たしたかについての再検討をおこなった。 また上記の再検討と同時に、音楽家の受容と密接に関わる観光イヴェントにおけるイメージの確立の方法と可能性、ドイツ語圏の文化遺産とそれにまつわるイメージに関する観光事業の役割と影響力、といった、相互に関わりあうメカニズムの解明に向け、考察と研究を展開した。 結果、ドイツ語圏における「ベートーヴェン・イヴェント」の展開を具体的な柱としながら、観光政策を通じて浮かび上がるベートーヴェン・イメージの受容と、ドイツ語圏の文化イメージの相関関係について詳細な分析を実施できた。(とりわけ1870年のベートーヴェン生誕100年祭にあたっては、ウィーンやベルリンといったドイツ語圏の大都市のみならず、地方都市においても、時に街の規模を上回るような内容のベートーヴェン祭を、しかも観光を視野に入れながら展開していることを知ることができたのは大きな収穫であった。19世紀に確立された「楽聖ベートーヴェン」のイメージが、即観光と密接な関係を持つに至ったのは、きわめて興味深い現象である。)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は2021年度に比し、コロナ禍の感染拡大状況に応じた大学側の渡航制限基準やそれに伴う諸手続きの緩和が実施されたため、オーストリアでの調査が可能になり、ウィーン楽友協会資料館をはじめオーストリア国立図書館等における文献調査、インタビュー調査が可能になり、研究を大きく遂行することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、日本において「ベートーヴェン・イヴェント」がいかなる形で受け入れられてきたかという受容史の側面についても詳細な分析を進めつつ、そのメカニズムを構成する要素がコロナ禍によってどのように制限されたのか、一方そのような制限下で「テクノロジー」の応用によってどのような対応が可能か、という視点からの戦略形成を、これまでの資料収集を基に分析し、こうしたイメージ形成のあり方から演繹される我が国のツーリズムに対する応用論や方法論を提言する予定である。
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Causes of Carryover |
コロナ禍やウクライナ問題を原因とする物価高、燃料費の高騰、航空券代の高騰等で外国出張費が当初の計算を完全に上回る額となったことに伴い、当初計上していた物品費、人件費等を節約、削減し、次年度の外国出張費に補填する必要が出てきたため。
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