2023 Fiscal Year Research-status Report
小規模住民組織を単位とした持続可能な観光地域づくりに関する計画論的研究
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21K12477
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
川澄 厚志 金沢大学, 融合科学系, 准教授 (00553794)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コミュニティ開発 / 小規模住民組織 / コミュニティベースドツーリズム / 持続可能性 / 観光地域づくり / プロプアーツーリズム / 計画論 / 参加型開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
タイのコミュニティ開発は従来、コミュニティ全体を対象とするものであり、オンサイトの開発では、土地分有事業や区画整備等を応用した様々な手法がコミュニティの状況に応じて展開されてきた。これに対し、小規模住民組織(SG)を単位としたコミュニティ開発は、2003年にコミュニティ組織開発機構(CODI)の都市貧困層コミュニティにおける住環境整備事業(BMP)で本格的に導入され始めており、いわば事業を円滑に遂行するためのツールとして位置づけることができる。本研究の目的は、「目的遂行型SG」の開発特性と比較検証しつつ、農村コミュニティにおけるコミュニティ・ベースド・ツーリズム(CBT)等でみられる「テーマ型SG」における開発特性を明らかにし、持続可能な観光の観点により、計画論的視点からその有効性を分析することである。本研究で対象とした展開事例を分析し、住民の合意形成を図る目的でソフトシステムを組み込んだSGを単位とした開発手法を構築し、持続可能な地域づくりの発展に資することを最終的な目標としている。 2023年度におけるタイでの現地調査は、テーマ型小規模住民組織の活動実態を把握するため、スラタニー県バンバイマイ村で2023年8月に実施した。また、余暇ツーリズム学会(2023年10月)、日本観光研究学会(2023年12月)、International Conference on Tourism Sciences2024(2024年3月)等の大会への参加を通して、これまでに得られた知見・データ等の整理を行った。 最終年度となる2024年度は2023年度に実施したバンバイマイ村における調査で得られた知見と課題において、補完調査を実施していく。特に、課題として、村の地図がないので、、地図の作成を通して、村の空間的特徴を明らかにし、同村の地域資源の分布や地理的特性を明らかにしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、これまでの科学研究費助成事業の研究課題(17K02140、23760588、21860074)に連関した研究テーマとして取り組んでいる。2021年度は新型コロナウイルス感染症の影響により、現地調査を実施することができなかったが、2022年度は現地調査を2回、2023年度は1回実施することができた。現地調査に加えて、これまでに得られた知見やデータ等及び、先行研究の整理を行っている。具体的には、公共事業の中に組み込まれている「目的遂行型SG」及び、農村コミュニティにおける持続可能な観光地域づくりの中に組み込まれている「テーマ型SG」の活動を中心に、小規模住民組織を単位としたコミュニティ開発の特性について、分析・検証を試みている。加えて、本研究の成果をわが国の観光地域づくりの計画における代替可能性を模索しており、これまでに、東日本大震災の被災地である岩手県釜石市根浜地区、熊本県サイハテ村、北海道清水町、石川県中能登町などにおけるコミュニティツーリズムやエコビレッジ、関係人口構築に関する実態把握を実施している。こうした国内事例も加えて、小規模住民組織を単位とした観光地域づくりの計画手法の構築を試みたいと考えている。 上記に関連する研究業績として、2023年度は日本観光研究学会査読付論文1本、地域活性化研究所所報1本、余暇ツーリズム学会での口頭発表4本、International Conference on Tourism Sciences2024での口頭発表3本、観光学術学会や日本観光研究学会の企画セッション2本、研究室のプロジェクト報告書2本、その他講演会やワークショップ等での口頭発表などの研究業績をあげることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策として、これまでの現地調査で得られた知見については、引き続き統計処理・分析を行い、それぞれの事例(目的遂行型SGとテーマ型SG)を比較検証し、小規模住民組織を通した持続可能な観光地域づくりの方法論を構築していく。その上で、本研究課題は、これまでにタイを主な調査対象地域として進捗させてきたが、最終的にはアジア地域における持続可能な観光地域づくりの開発手法として構築し、わが国の観光地域づくりの施策に活かしていくことで、次世代に対して自らの豊かな暮らし方の選択肢を与えていくことがウェルビーイングやレジリエンスの観点からも重要であると考えており、2024年9月には科学研究費助成事業(科研費)基盤研究(B)に継続課題として応募したいと考えている。 2024年度の現地調査については上記の「現在までの進捗状況」に記述したことに加えて、テーマ型小規模住民組織の特性を分析するためのデータを収集したいと考えている。本研究における主な調査目的は(1)展開事例において事業化するに至った経緯(意思決定プロセス、その理由等)を明らかにする、(2)展開事例における小規模住民組織の組織化の背景、活動実態、運営方法等を明らかにする、(3)当該事例におけるテーマ型SGを通した地域資源の評価手法や活用方法を明らかにする。なお、2022年度同様に、国内におけるテーマ型SGによる観光地域づくりと関係人口構築に関する展開事例(岩手県、熊本県、石川県等)の調査も継続的に実施していく。その上で、小規模住民組織を単位とした観光地域づくりの計画論に関する検証を行い、その計画手法の構築を試みる。
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Causes of Carryover |
対象事例であるバンバイマイ村における地図作成が必要であることから2024年度の夏季休暇中に実施していく必要性及び、令和6年能登半島地震の影響(研究代表者の所属する研究機関による復旧と復興に向けた諸活動への参画が急務となった)により次年度使用額が生じている。 最終年度である2024年度の使用計画として、本研究の目的を達成するために、スラタニー県バンバイマイ村で現地調査を2024年8月に約1週間程度の予定で実施したいと考えている。主な現地調査の目的は(1)村の空間的特性と地域資源の分布把握のための地図づくりを実施する、(2)展開事例におけるSGの組織化の背景、活動実態、運営方法等を明らかにする、(3)当該事例におけるテーマ型SGを通した地域資源の評価手法や活用方法を明らかし、テーマ別小規模住民組織の特性を明らかにしたい。以上により、小規模住民組織を単位とした観光地域づくりの計画論に関する検証を行い、持続可能な観光地域づくりの計画手法の構築を試みる。加えて、これまでの研究成果については、学術論文や学会等での研究発表を行っていく。
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