2021 Fiscal Year Research-status Report
ハイブリッド型相互学習による互恵的な海外ボランティア・ツーリズムに関する研究
Project/Area Number |
21K12479
|
Research Institution | Wakayama University |
Principal Investigator |
藤山 一郎 和歌山大学, 国際連携部門, 准教授 (70388106)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大山 牧子 大阪大学, 全学教育推進機構, 助教 (70748730)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
|
Keywords | オンライン / ボランティア・ツーリズム / サービス・ラーニング / ハイブリッド / フィールドワーク / 大学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「ゲスト」と「ホスト」が接触する海外のボランティア・ツーリズム(以下、「VT」と表記する)に焦点をあてる。申請時点においては、両者が互恵的関係を構築する過程において、「現場でないと達しえないこと(リアル)」と「現場以外で達しえること(オフライン/オンライン)」の組み合わせを明確にしたハイブリッド型のVTモデルを提示することを目的としている。主たる研究対象は、大学生が参加する大学の正課、または正課外活動としての発展途上国に対する海外ボランティア・プログラムであるが、2021年度においてもコロナ禍の長期化により依然として海外ボランティア・プログラム、および実践調査を実施することが不可能となった。 そこで、初年度では、国内大学生と現地大学生が協働して、オンラインによるサービス・ラーニングを試みる正課のプログラムを開発し、実践することを通じて、「ゲスト」と「ホスト」の相互作用が発生するかどうかを検証した。本研究の投稿論文については現在査読中である。 また、課外活動として国内大学生が実践する海外ボランティア活動のオンライン化が、フィールドへ赴くことを前提としていた学生に及ぼしている認識変化について調査・考察し、あわせて先行研究をまとめた(間中光・藤山一郎「ボランティアツーリズムのオンライン化は誰を資するのか:コロナ禍における海外ボランティアから問う「フィールド」の含意」、『立命館大学人文科学研究所紀要』、131号、2022年1月)。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナ禍により当初計画していた現地調査が実践できないものの、国内・オンラインで実施可能な調査・研究を共同研究者とともに実施することができている。 オンライン型の海外サービス・ラーニングの互恵性に関する実践検証では、具体的には日本の大学生,インドネシアの大学生および現地住民の3者に及ぼした学習効果ならびに実践効果から,サービス・ラーニングの要件となる互恵性を測るためそれぞれを対象に事前・事後のアンケート調査を実施した.その結果,オンラインで,3者間の交流を促してプロジェクトを進めることで,両国の履修者は授業全般に対して概ね満足すると同時に,現地住民も大学生の提案に満足していることが確認され,オンラインでも互恵性の要件を満たす可能性が示唆された.これにより、今後現地渡航が可能になった場合においても、ハイブリッド型のプログラムと今回のオンライン・プログラムの比較研究も可能となった。 また、課外活動によるオンライン型の海外ボランティアに関する論考では、従来の「フィールドへ赴く」ことのオンライン化が、ボランティアツーリズムに与える影響について考察し、ボランティアツーリズムにおいて「フィールド」が内包するものを検討した。具体的には、日本人大学生によるタイの障がい児童に対するボランティアツーリズムを事例とした。日本人大学生(ゲスト)が、現地支援活動をおこなう日本のNPO組織(ブローカー)の仲介を受けつつ支援活動をおこなうという構図である。聞き取り調査の結果からは、フィールドを「過程の場」として捉えるゲストと「結果の場」と捉えるブローカーでは、フィールドへ赴くことのオンライン化が与える影響に差異があり、特に前者にとっては、フィールドの再現性という点で大きな課題があることが明らかになった。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は以下のとおりとする。現地渡航・調査を見据えて、第1は、海外サービス・ラーニングプログラム(正課)のハイブリッド化(オンライン/現地活動)を策定する。今年度のオンラインプログラムの知見を活用しながら、事前教育(オンライン)→現地活動(オンサイト)→事後教育(オンライン)の最適な組み合わせを検討する。 第2は、現地渡航・調査が不可の場合は、オンライン・プログラムについて、サービス・ラーニングの「サービス」と「ラーニング」の質的改善をはかり、実践検証をおこなう。 以上を通じて、ゲストとホストの相互利益を生み出す実践評価と学習評価の項目・指標の策定を試みる。
|
Causes of Carryover |
コロナ禍により海外渡航・現地調査が予定通り実施できなかったため。 次年度で海外渡航が可能となった場合は、現地調査費用に充当する予定である。
|
Research Products
(5 results)