2021 Fiscal Year Research-status Report
高等学校における観光ビジネス教育導入による観光教育の体系と接続に関する研究
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21K12489
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
宍戸 学 日本大学, 国際関係学部, 教授 (00364290)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 観光教育の体系 / 観光ビジネス教育 / 学習指導要領 / 観光教育の接続 / 高大連携 / 地域との連携 / 教員養成 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、新学習指導要領の商業科目「観光ビジネス」が2022年度から導入されることを契機に高校の観光教育のあり方を考察するものである。現在は、小学校・中学校・高校・大学において、様々な観光教育が行われているが、その体系は明らかではない。そこで、他の観光教育との接続において、中間的位置づけであり、教育内容も多様化する高校の観光教育に着眼して、全体の体系や接続を考察した。 研究1年目である2021年度の研究成果は、以下の4点である。 (1)小学校・中学校の観光学習や高校の普通教育・専門教育、大学の観光専門教育や地域活性化のための観光教育について、これまでの変遷と現状把握から、その多様化と今後の広がり、体系について整理し、専門誌への掲載や学会発表で理論的枠組みを提示した。 (2)高校の観光教育の現状の整理と考察から、高校の観光教育は、小学校・中学校の観光学習の延長線上にある観光の基礎教育を深化させるとともに、産業や地域活性化に有効な専門人材育成という両面を持つことを明らかにした。そして高校の観光教育を軸とする「観光教育の体系構想イメージ」を描き、今後の研究課題とした。今後は、このプロトタイプの妥当性を検討する。 (3)「観光ビジネス」の導入状況については、関連する日本観光ホスピタリティ教育学会のグループ研究課題と連携し、他の研究者達とともに高校の「観光ビジネス」導入に向けた高校の現場の状況を調査した。その結果、現場の教員達は、各校の観光ビジネスへの期待とともに次の5つの課題を抱えていることが判明した。①教員養成、②科目理解、③評価、④教科書、⑤大学など他機関との連携の不安、である。 (4)上記の(2)のプロトタイプおよび(3)の研究成果をもとに、研究者の所属大学と静岡県内で観光ビジネスに取り組む高校と高大連携による観光教育の取り組みを行い、この結果を考察する取り組みに着手した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)による影響で、各地域の観光教育に取り組む学校や関係者への調査は十分に実施出来なかったが、研究初年度として、本研究の理論的な枠組みの構築を行い、学会で発表し、研究者達と議論することが出来た。また所属する学会のグループ研究助成と連携することで、観光ビジネス教育推進のための実践的な高大連携の研究会を開催し、本研究と関連して、他の研究者や高校教員と意見交換をすることが出来た。また本研究で実施予定の調査の予備調査として参考になるアンケート調査を行うことが出来、貴重なデータを入手することが出来た。これらのネットワークを生かして、研究を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度は、様々な学習段階や目的等における観光教育の多様性とその変遷から体系を構想するために、観光教育の枠組みを理論的に整理した。高校の観光ビジネス教育の導入に向けて、学校現場や各校の教員達の現状については、北海道、静岡、徳島などを中心に複数の地域のサンプルデータを入手することで、今後の事例研究に有効なデータが入手出来た。COVID-19の感染拡大により、制約は多いが、今年度予備的に入手出来たデータをもとに、次年度は国内の各地域や学校に向けた調査票調査を行うことで、高校の観光教育と観光ビジネス導入の概況を把握し、それらの課題を整理する。具体的には、都道府県教育委員会等を対象に、全国規模での高校の観光ビジネス教育等の調査を実施する。 また大学の観光教育を含め、小学校・中学校の観光教育については、引き続き情報収集を行い、体系を考える上で必要となるデータを収集し、全体像の把握に努める。特に2020年度から観光庁が施策として取り組んでいる「初等中等教育における観光教育の推進に関する協議会」事業とも連携して、多くの学校の実践や行政の試みなども研究データとして収集に務め、関係者との議論を経て、観光教育の体系化構想に生かしていく。その上で、高校の観光ビジネス教育について検討する。 高大連携の推進については、複数地域における「観光ビジネス」による高大連携の教育実践を通して、課題解決型の研究アプローチも行う。これについては、関連研究を行うグループ研究と連携して研究を深化させる。新学習指導要領が導入される2022年度以降、地域の学校で取り組み事例が増えると予想される。様々な取り組みに着目し、多くの実践と取り組む関係者の課題意識をもとに、研究を進めていく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大などにより、予定していた各地域への調査およびそれに関連したデータ収集並びにそれにもとづく調査票調査などが実施出来なかったため。次年度に実施し、繰り越された助成額を使用する。
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