2021 Fiscal Year Research-status Report
観光経験の哲学的分析及びその観光倫理教育への活用手法に関する基礎的研究
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21K12493
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
原 一樹 京都外国語大学, 国際貢献学部, 教授 (90454785)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 観光経験 / 想像力 / スローツーリズム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、「観光経験の哲学的分析及びその観光倫理教育への活用手法に関する基礎的研究」と題し、3か年の計画で、「観光者の観光経験の哲学的理解をいかに深めることができるか、また、その成果をいかに適切に観光倫理教育に導入することができるか」という問題を解明するものである。研究1年目である2021年度は以下の研究を遂行した。一つ目の研究として、観光学・哲学・文学の様々な理論や言説(マキァーネル、サルトル、ニーチェ、東浩紀らの言説)を参照しプレツアー、オンツアー、ポストツアーにおける人間の「想像力」の作用について考察を深め、「観光経験における<想像力>の役割に関する哲学的考察―包括的探究に向けた論点の整理―」と題し口頭発表を行った。二つ目の研究として、観光における人間の知覚や感情について、コロナ後の観光において重要となると考えられる「遅さ(スローネス)」や「経験に時間をかけること」という観点に注目し、「スローツーリズム」の定義・概念や事例、国内外の現状や課題を考察し、「モビリティ・ジャスティスとスローツーリズム-日本における現状把握と展望」と題したシンポジウム発表を行った。三つ目の研究として、観光経験の哲学的分析の観光倫理教育への導入の問題について、観光学者Tribeの観光教育の枠組みや、価値教育を主唱するTEFI(Tourism Education Futures Initiative)の枠組みにおける哲学や倫理学の占めうる位置について検討し、「観光倫理への倫理学諸理論の導入―現状と課題」と題した口頭発表の一部に組み込んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度は、観光経験における想像力・知覚・感情について研究することを当初計画としていた。結果として、想像力については欲望概念と合わせ、観光学・哲学・文学の諸言説を用いて考察を深め、口頭発表に取りまとめることができた。また、知覚や感情については、コロナ後に重要となる「遅さ(スローネス)」という観点に注目し、この点に関連する観光経験や事例・課題等に関する考察を深め、こちらも口頭発表に取りまとめることができた。観光教育における哲学的・倫理学的考察の位置に関する検討も進められた点を踏まえ、3か年の研究計画はおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画としては、2年目は観光における出会いの偶然性と主体の変容のあり方について、観光学・哲学・文学の言説を用いて研究する予定となっている。この論点については、1年目の研究対象である、観光における想像力・欲望・知覚・感情という主題が深く関与すると言えるので、これらの諸概念を巡る考察も更に深めつつ総合的に探究を進める予定である。
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