2023 Fiscal Year Research-status Report
変容する都市郊外空間における男性住民の地域「参加」-ジェンダー再構築に注目して
Project/Area Number |
21K12504
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Research Institution | Tokyo Woman's Christian University |
Principal Investigator |
関村 オリエ 東京女子大学, 現代教養学部, 教授 (70572478)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 都市郊外 / ジェンダー / 地域「参加」 / 人文地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は,性別役割分業や規範を問い直すジェンダーの視点から,計画空間としての都市郊外の変容・再編を,そこに暮らす住民たちの日常的実践から分析・検討していくことである.本研究では,とりわけ見過ごされることの多かった男性たちのジェンダーに着目することで,男性たちはどのように地域・家庭に進出しつつあるのか,また地域や家庭など彼らにとっての新たな領域において,いかなる実践を展開するのか,そしてそれらは実際の地域・家庭にどのような影響をもたらすのかということを考察したいと考えている. 2023年度の研究実績の内容は以下の二点である.まず,大阪府豊中市における働き盛りの男性(父親)たちの補足的調査とその報告である.男性(父親)たちの地域「参加」については,近年「おやじの会」等の任意団体(組織)による活動が注目されている.本研究でも「地域の新たな担い手」として期待される男性たちに注目して調査を行ってきた.しかし,現役世代の男性たちにとって,こうした活動は職場での就業と並行して行われるもので,家庭責任などをともなったものになりにくいことが分かってきた.これに関連して,「新・性別役割分業」のように家庭責任の分担問題が解消されないまま,公共空間(たとえば地域社会)の担い手がいまだ妻や母親など女性たちに依拠したものになっていることが明らかになった. 次に,群馬県伊勢崎市における団地の高齢化と外国にルーツをもつ人びとの定住化についての調査研究の実施である.伊勢崎市は,自動車部品をはじめ食品や衣料品等の工場が立地する首都圏の縁辺部の都市になるが,近年,人口の高齢化とともに工場労働者となる人びと(外国人,外国にルーツをもつ人びと)の定住化が進んでいる.本研究ではこうした「地域の国際化」がもたらす新たな動きを,参与観察とインタビューを通じて明らかにすることを目指している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度から2022年度にかけては,所属機関のCOVID-19による出張制限,また対象地域における行動制限があり,当初計画していたようなフィールドワークを進めることが出来なかった.ただしこの間,既にこれまで調査を行って収集した資料の整理や文献収集を行うことが叶い,本研究に関するいくつかの課題を進めることが出来た.また,こうしたフィールドワークの制限期間には,研究協力者とのメールや手紙による地域状況や研究に関する情報・意見の交換等を行い,関係性の維持や調査再開に向けた更なる関係構築にも努めた. COVID-19による行動制限とその影響が尾を引く期間中は,テーマに関する研究会(オンライン)の実施やシンポジウム参加を行った.ここでの議論は,研究成果として公表することが出来た.2023年度は,フィールドワークの進捗については滞ってしまった反面,対象地域に関する文献を通じた理解と,ジェンダーと地理学の最新議論の理解・公表に取り組むことが出来た.研究協力者や研究者ネットワーク等の関係性構築については引き続き努めていきたい.
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は,COVID-19の行動制限が概ね緩和・解除されたので,研究課題である大阪府と群馬県のフィールドワークを進めていきたいと考えている.2022年度,2023年度中は,従来の先行研究や文献,関連資料による成果となってきたが,今後はフィールドワークに基づくデータの収集とこれらを活用した研究成果の公表を目指していきたいと考えている.研究成果の公表については,2024年度に国際地理学会への参加(アイルランド・ダブリン)の機会を活用して,日本のジェンダー地理学の事例研究を国際的な潮流に位置づけられるように努めていきたい.国際的・学際的な研究者ネットワークの構築の機会も得られるため,多角的な議論を取り込めるよう努めていきたい.いずれにせよ,研究協力者により実現される本研究の成果を,学術や社会に幅広く還元・共有することを目指していく.
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Causes of Carryover |
既に記載したとおり,2022年,2023年まで行われていた感染症流行による行動制限に加え,研究代表者の所属機関の変更(2022年度4月)による影響があると思われる.特に,現・所属機関の出張要件は非常に難解であり,実施された出張費用について一部支出不可となったケースが多々あった.また提出書類確認の煩雑さもあり,研究成果の執筆のために時間を優先させた結果,旅費申請じたいを断念したこともあった.当初の最終年度(2023年度)に,所属機関の担当部署を通じて研究延長の申請を行った.ここで生じた次年度使用額を活用した成果報告(2024年度8月アイルランドで開催の国際地理学会への参加)を予定しているが,無事に研究が遂行できることを願っている.
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