2021 Fiscal Year Research-status Report
北朝鮮ドラマ/映画のジェンダー表象と家父長制に関する研究
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21K12505
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Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
山下 英愛 文教大学, 文学部, 教授 (80536235)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 北朝鮮 / ジェンダー / ドラマ / 映画 / 表象 / バード / 統一言説 / 後継ぎ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、次のような問いから出発する。①北朝鮮社会において、人びとの生活世界のジェンダー規範はどのようなものであり、時代によってどのように変化してきたのか?とりわけ、体制側はドラマ/映画を通してどのような人物像を理想として打ち出してきたのか。それは体制維持とどのようにつながっているのか?/いないのか?②長年同じ家父長制文化を有してきた南北のジェンダーイメージは、分断後どのように変容してきたのか? 上記のような問いに答えるために、北朝鮮で制作され放映されたドラマ(映画を含む)を分析し、日常生活や社会における性役割や性規範を考察することを本研究の課題として設定した。 本年度は①前科研の研究成果の発表と資料整理、②映像分析のための枠組みづくり、③映像視聴と分析作業、④文献研究及び韓国の昔のドラマの入手または視聴可能な方法を調査する、⑤前科研の研究活動の中でつくったネットワークをもとにコリア・ジェンダー研究会を立ち上げ、活動を本格化させること、などを実施することを目標とした。 この内、①は、韓国における北朝鮮女性研究の概要を整理した論文と、日朝合作映画「バード」を題材とした論文を発表することができた。前者の論文では、韓国における北朝鮮ジェンダー研究の歴史と現状、その特徴などを大まかに跡付けることが出来た。筆者が本研究課題で行おうとしている映像を利用した研究についても、概要を理解する手がかりを得た。後者の論文では、実在の人物をモチーフとする日朝合作映画のナラティブ分析を通して、後継ぎの表象が南北統一の言説とどのようにつながっているのか、どのようにジェンダー化されて表現されているのかを考察した。映画と原作小説との違いや、1990年当時のジェンダー・イメージの特徴なども浮かび上がらせることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた5つの課題の内、①前科研の研究成果の発表と資料整理については上記概要に記した通り、予定通り論文を発表することができた。資料整理は継続中である。②映像分析のための枠組みづくりについては、韓国における研究史の整理を行いつつ、どのような分析枠組みが有効かについて考察した(継続中)。③の映像視聴と分析作業については、少しずつ視聴している。入手したドラマや映画の本数が非常に多いためその整理を行っている。ただ、制作年度が不明な作品が多く、整理に少々手間取っている。④比較対象としての韓国の昔のドラマの入手については、韓国への渡航が出来なかったため、ほとんど進展していない。ただし、部分的な映像はネット上で視聴できるものがあることがわかった。⑤前科研の研究活動を土台につくったネットワークをもとに立ち上げたコリア・ジェンダー研究会(仮称)は、活動を継続することができた。2021年度には4回開催し、会員も増えつつある。北朝鮮のジェンダーや表象などに限っているわけではないため、会員の関心分野や発表内容は多様である。今後、さらに会員数を増やしつつ、北朝鮮のジェンダー研究の活性化に努める予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も本年度の活動を基本的に継続する。特に、①韓国と米国における北朝鮮ドラマ/映画に関する既存研究の整理、②北朝鮮ドラマ/映画の情報整理、③特定のドラマや映像に関する分析に取り組む。④文献研究や研究会活動を通して、分析視点や方法の幅を広げる努力を行う。 現在の北朝鮮社会におけるジェンダー・イメージや表象と権力構造との結びつきについても考察を続ける。そのために、北朝鮮のニュースなど各種放送コンテンツにも目を通すようにする。また、脱北者のユーチューブ番組なども参照する。 韓国への渡航が可能であれば、資料収集を行い、研究者たちにも面会して情報を交換する予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナによる海外への渡航制限のため、資料調査ができなかった。次年度は海外への資料調査及び字幕翻訳に使用する予定である。
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Research Products
(8 results)