2023 Fiscal Year Research-status Report
北朝鮮ドラマ/映画のジェンダー表象と家父長制に関する研究
Project/Area Number |
21K12505
|
Research Institution | Bunkyo University |
Principal Investigator |
山下 英愛 文教大学, 文学部, 教授 (80536235)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 南北コリア / ドラマ / 映画 / ジェンダー / 家父長制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の問いは、①北朝鮮社会における生活世界のジェンダー規範がどのようなものなのか、②長年同じ家父長制文化を有してきた南北のジェンダー規範は、分断後、それぞれの異なる社会体制のもとでどのような役割を果たしかつ変化してきたのか?共通点や違いがあるとすれば、それはどのような点なのか?というものである。本研究においてドラマや映画という映像を対象とするのは、北朝鮮の資料の中で比較的アクセスが容易であり、南北の比較が可能ではないかと考えたからである。 2023年度は、引き続き北朝鮮の映像やジェンダー関連文献資料の収集と分析を行いつつ、①北朝鮮及び韓国の映画やドラマ映像の視聴と分析、②国際学会での発表、③アメリカにおける北朝鮮ジェンダー研究の現状の把握、④北朝鮮との比較対象である韓国のドラマや映像に関する視聴と分析などを行った。 6月に開かれたバークシャー女性史大会(米国サンタクララ大学)では、南北及び延辺やディアスポラを含めた「コリアン社会と東アジアのジェンダーイメージ:ディアスポラ、家父長制と映像表象」というパネルを企画し、発表することができた。この試みは、本研究の方向性を見据えて、現代史におけるディアスポラを含むコリアン社会のジェンダーの変容というより大きな枠組みの有効性を提示するきっかけとなった。 9月からの米国での在外研修では、北朝鮮のジェンダー史を研究するラトガース大学のスージー・キム教授をはじめ、ジェンダーや映像、コリア文化に関する研究者と交流し、視野を広げることができた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2023年度は北朝鮮映画のジェンダー分析を行い、国際学会や米国での学会及びレクチャーなどで発表し、研究者たちと意見交換をした。 9月からの米国での在外研修では、在米の研究者たちと北朝鮮や韓国のジェンダーについて議論した。また、これまで筆者が関わってきたいくつかの研究テーマ(在日アイデンティティ、慰安婦問題、韓国ドラマ、北朝鮮映画の女性表象)について発表する機会があり、研究の全体像や方向性、分析枠組みについて多くの示唆を得ることができた。また、授業やイベント、映像などを通して在米コリアンと北朝鮮及び韓国との関係という新たな知見を得た。これらの経験は北朝鮮のみならず朝鮮半島及びコリアンディアスポラのジェンダー研究の視点を豊かなものにする上で役に立つと考えている。 米国での北朝鮮関連資料の所在や、どの大学にどの資料が多いかなどの情報も得ることができ、資料収集も行うことができた。 コリアン社会とジェンダーについて考えるK-Gender研究会はオンラインで継続しており、参加者も順調に増えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の予定は以下の通りである。 ①在外研修期間中(7月末まで)に米国在住研究者たちとの交流、資料収集と分析を継続する。 ②8月初旬に、北朝鮮研究を専門とするラトガース大学のスージー・キム教授を招き、日本在住研究者たちとの研究交流会(K-Gender)を行う。 ③これまでの研究(北朝鮮映画のジェンダー分析)を論文にまとめる。 ④韓国ドラマに関する歴史とジェンダー/フェミニズムに関する執筆を継続する。 とりわけ④に関しては、本研究課題の重要な要素を占める南北のジェンダー比較にも関わるため、優先的に取り組む予定である。
|
Causes of Carryover |
在外研修期間中は検収の都合上、図書購入が電子書籍に限られたため、購入できなかった図書費が残った。この分については帰国後に使用する。
|