2021 Fiscal Year Research-status Report
Gender Norms Construction in National and Transnational Digital Media Spaces
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21K12512
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
高馬 京子 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任教授 (60757475)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 洋美 明治大学, 情報コミュニケーション学部, 専任准教授 (70611739)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | デジタルメディア / ジェンダー表象 / トランスナショナル / 規範 / 親密性 / デジタルテクノロジー / ファッション |
Outline of Annual Research Achievements |
21世紀初頭に起きた最も重要な社会変動の一つであり、差異や権力関係の再生産の問題を生み出すデジタル化を背景に推進する本課題、ナショナル・トランスナショナルなデジタルメディア空間におけるジェンダー規範の構築に関する研究において、初年度はデジタルテクノロジーとジェンダーについて、親密性に着目をし検討した。共同研究者の田中洋美は社会学、ジェンダー論の観点から親密性、デジタルテクノロジーとジェンダーを考える上での理論的、社会的背景をまとめた。また、高馬はデジタルテクノロジーとジェンダー、親密性のケーススタディーとして昨今顕著な事例であるマッチングアプリ利用者のメディア表象に着目し事例研究を推進した。メディアの変遷とともに、親密性が構築させる出会いの場も変化しているが、マッチングアプリを利用する女性像がある種、読者を受動的主体として追従させるべく規範的女性像を提言してきたファッションメディア上でどのように構築されるのかを検討した。また、本研究とも関連する『デジタル社会の多様性と創造性――ジェンダー、メディア、アート、ファッション』というタイトルの書籍の編集、執筆に高馬、田中も加わり準備をすすめた。高馬はその中で「デジタル社会におけるファッションメディアとジェンダー表象」についての論考をまとめた。ファッションメディアのデジタル化が進む中、ジェンダー表象がどのように変化したのか、デジタルファッションメディアはエンパワーメント空間になったのかについて考察を行った。デジタル社会におけるジェンダーを考える上でも、ファッションとアートをそれぞれ基軸に考えることで、エンパワーメント空間になりうるかいなかも異なっていることも明らかになった。初年度で推進し得たデジタルメディアとジェンダーの関係についての知見をもとに、次のステップに研究を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績のところでも示したように、デジタルテクノロジー、ジェンダー、親密性について研究代表者、研究分担者の双方が行った2021年度の研究を公開し、それに対する意見を聞く場として、一つには2021年度国際ジェンダー学会大会「デジタルテクノロジーとジェンダー」(田中・高馬が大会実行委員長を務めた)を開催することができたためである。そこでは、デジタルテクノロジーとジェンダーを考える上での理論的・社会的背景を田中がまとめ発表したこと、また、田中のコーディネートにより基調講演として、権力を考察しそれに挑みバイナリーとヒエラルヒーを再考を原則とする「データ・フェミニズム」についてキャサリン・ディグネイジオ氏(米国マサチューセッツ工科大学)を招待・報告をしてもらったこと、シンポジウム「デジタル時代におけるジェンダー、セクシュアリティ、親密性」では、司会として田中が議論をまとめる形で、招待講演者陳力深氏(香港中文大学)による「マッチングアプリ文化におけるネットワーク化された性的公衆の出現」、高馬による「日本のメディアで構築される異性愛恋活・婚活マッチングアプリ利用者という規範的女性像」という二つの報告を行い、文化人類学者である砂川秀樹氏、学会員との討論を行えた。このように本研究を紹介するとともに、本研究課題に関する関連テーマ、また意見などを国内外の研究者の人と議論する場をもてたことで今後の研究の発展につなげていく道筋ができた。また、同様に、上記したように『デジタル社会の多様性と創造性――ジェンダー、メディア、アート、ファッション』という本の準備をすすめていけたことで、自分たちの研究遂行、発信、意見交換をスムーズに行うことができ、おおむね順調に進展していると結論づけられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は本研究を遂行するために、初年度すすめてきたテーマ、「デジタル時代におけるジェンダー、セクシュアリティ、親密性」、『デジタル社会の多様性と創造性――ジェンダー、メディア、アート、ファッション』について初年度の研究成果をもとに、さらに研究を前進させる。今後の方策として、「デジタル時代におけるジェンダー、セクシュアリティ、親密性」については、理論的枠組み、歴史的背景もさらに調査していきながら、特に自治体の婚活AIについて、またマッチングアプリの調査、も推進していく。また、「日本のファッション・メディアで構築される異性愛恋活・婚活マッチングアプリ利用者という規範的女性像」については、分析するメディアをもう少し広げて(地理(日本以外)・時間(過去・未来)の越境の考慮)考察する予定である。国際ジェンダー学会学会誌の特集という形で文字化して出版していく準備をすすめる。また、2点目として『デジタル社会の多様性と創造性――ジェンダー、メディア、アート、ファッション』の書籍刊行を目指し、また研究を推進するために、意見を多く聞く場を設けたい。また、この2点目の枠組みでは、自らの身体を放棄し、アバターを用いて参加するヴァーチャル空間におけるファッションの役割とそこで展開されるファッションを身に着けて提示しようとするジェンダー規範についても考察を進める所存である。このようにナショナル・トランスナショナルなデジタルメディア空間におけるジェンダー規範の構築について、親密性、セクシュアリティー、ファッションをキーワードに多角的に考察をすすめ、研究課題を遂行していく予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響が続き海外での調査研究などが遂行できなかったが、本年度、来年度を中心に海外での調査研究・発表なども遂行していく予定である。
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Research Products
(11 results)