2021 Fiscal Year Research-status Report
性暴力被害者に対する法的救済の仕組みーフェミニスト法理論からのアプローチ
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21K12514
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Research Institution | Ferris University |
Principal Investigator |
山本 千晶 フェリス女学院大学, 国際交流学部, 准教授 (90648875)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 親密な関係性における性暴力 / 精神的DV / ジェンダー / セクシュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)親密な関係性において生じる性暴力の特徴の分析 2018年に一般社団法人社会的包摂サポートセンターが実施したDV被害調査のうち、「性行為を強要する」(調査対象となった830件の相談のうち185件)と「性行為に応じないと不機嫌になったり冷たくしたりする」(同101件)(重複あり)という2つの調査結果に着目し、Evan Starkによる「累積的効果cumulative effect」という考え方を用いて、親密な関係性においては両者がいずれも被害者に性行為を強要するという「効果」を持っている点で違いがないことを明らかにした。そして、それにもかかわらず、後者がもつ「効果」(「不機嫌になる」といった態度)は、法制度や被害者支援制度において十分に評価されることがなく、被害者救済につながらないことを指摘した。(山本千晶2022「ドメスティック・バイオレンスと精神的暴力」『法学新報』第128巻,第7・8号)。 (2)親密な関係性において生じる性暴力とジェンダー 家庭内における性的暴力を含む精神的虐待の被害が圧倒的に女性に偏っている現状について、E.Starkらによる「Coercive control」概念に依拠しながら、これらの虐待が「女性らしさ」といったジェンダーや女性のセクシュアリティに対するステレオタイプを巧みに用いながらなされていることを明らかにした。そして、このような虐待の特徴ゆえに、被害女性においては自身のアイデンティティが深く傷つけられるという影響の大きさを指摘することで、親密な関係性における性暴力が軽視される傾向に対して問題提起を行った。これらの成果をまとめ、日本哲学会秋季大会ワークショップ「「住まい」から考えるアイデンティティと「自律」の再検討ーDV被害者支援を手がかりに考える」(2021年9月19日、オンライン開催)において報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は性暴力被害者と支援団体にそれぞれヒアリング調査を実施する予定であり、実際、3月に性暴力被害者のサバイバー1名に対して予備的なヒアリング調査を実施することができた。一方で、新型コロナウイルス蔓延防止に伴う移動の制限により、支援団体へのヒアリングをすることができなくなってしまった。そこで、理論研究に切り替え、これまで手薄だった英語圏の論文の収集とその精読を中心に行った。 性暴力の中でも、親密な関係性においてなされる暴力の特徴について分析するため、性暴力をテーマにした文献だけでなく、ドメスティック・バイオレンスの構造を分析する理論研究まで対象を広げ文献の収集と精読を行った。そこでは、支配のための手段の一つとして性的暴力が選ばれているという特徴を明らかにするとともに、それが「被害」として「見えない」あるいは見えにくい要因について、被害者の経験に焦点化しながら分析を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
3月に実施した性暴力被害者のサバイバー1名に対して予備的なヒアリング調査では、被害の経験を相談したり、あるいは世間に公表したりする中で、どのような「被害者イメージ」がつくられているかについて調査を実施した。そこでは、申請者が当初予想していたよりも広範な領域(たとえば、被害者支援の現場等)においても「被害者イメージ」が想定されているといった問題なども見えてきた。そこで、今年度は、本ヒアリング調査の結果を踏まえて問題点を整理し、支援団体に対する調査を実施する予定である。 また、引き続き理論研究も並行して進めていく予定である。「被害者イメージ」にはジェンダーステレオタイプが大きく影響しているという既存の研究結果における知見を活用しながら、申請者がヒアリング調査で得た「被害者イメージ」がどのようにつくられ、維持されているかについてのメカニズムをジェンダー視点から分析し、理論研究としてとりまとめたい。
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Causes of Carryover |
当該年度は新型コロナウイルス蔓延防止措置により移動の制限があり予定していたヒアリング調査を実施することが困難となった。また、学会や研究会等がいずれもオンライン開催になったことから、計上していた旅費を使用することがなかった。今年度はヒアリング調査を実施できる見通しが立ちつつあることに鑑み、予定していた性暴力被害者および支援団体に対するヒアリング調査を精力的に実施する予定である。
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Research Products
(2 results)