2021 Fiscal Year Research-status Report
メゾスコピック系材料の精密構造解析へ向けた軟X線共鳴散乱法の確立
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21K12523
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
高西 陽一 京都大学, 理学研究科, 准教授 (80251619)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 軟X線共鳴散乱 / ソフトマター / 構造解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
ソフトマターの特徴の1つはその自発的な組織化による階層構造にあり、その空間スケールは数nm~100nm程度で、その優れた光学的、機械的、電気的性質をもつ機能性材料として幅広く利用されているが、それぞれの特性はまさに系のもつ多彩な階層構造に起因しており、その構造および発現機構を理解し、応用できればこれまで存在しない、思いもよらない並外れた性能を備えた材料・構造を設計することも可能である。 本研究は、通常のX線散乱・回折では得ることのできない構造をより詳細に得ることができる共鳴X線散乱法を、硬X線ではなく炭素原子のK-edge吸収端エネルギーによる軟X線で行う手法を確立し、ソフトマターなどをはじめとする様々なメゾスコピック系材料の精密構造解析につなげることを目的としている。 初年度である今年度は、軟X線共鳴散乱測定が行える光学系を確立し、ソフトマターの中でも液晶やコロイド液体のような減圧下では蒸発してしまう様な試料が安定に測れるよう試料周りの工夫を考え、実検証を行った。炭素原子K-edge吸収端エネルギーの共鳴散乱軟X線共鳴散乱測定は入射X線のエネルギーが280ー300eV(化合物に依存)と低いので放射光施設の利用が必須となる。そこで分子研(愛知県岡崎市)のUVSOR施設の軟X線ビームラインBL3Uの共同利用申請して行った。 あらかじめ担当者と打ち合わせたこともあり、こちらの試料用の電気炉並びに散乱を検出する検出器を用意してもらい、初回でとりあえずキラル液晶のバイレイヤー構造を示す共鳴軟X線散乱ピークを研究津することに成功し、これまで得られていなかった化合物での新奇液晶相の長周期構造に関する散乱結果や、屈曲型液晶のB4相が形成するヘリカルフィラメント構造のらせん構造に関しても知見を得られはじめており、それについて複数の学会で成果報告も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現時点では、ほぼ申請時の計画に近い進捗状況であると考えられる。特に小角散乱による屈曲型液晶のらせん構造に関しては安定したデータを取ることができ、現在その成果について2つの国内学会ですでに発表し、今夏に国際会議の発表も決定しており、また論文も執筆中である。 広角散乱による測定でも最初に共鳴散乱が得られ、これまで測定ができなかったキラル化合物での測定により、新奇キラル液晶相の長周期構造に関しても散乱が得られ始めている、一方でいくつか問題も発生し完全なる再現性が得られていない現状もある。課題の一つには最適な試料(厚さや配向)が得られていないための散乱強度が弱いことがあり、また量子ビームの光学系の高調波成分が無視できないことなどが挙げられ、申請者およびビームライン担当者がそれぞれ議論を密にしながら対策を考案中である。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き最適な試料の作製に努めながらまずは分子研での共同利用実験を進める。また学会発表などの発信により、高エネルギー加速器研究機構のフォトンファクトリーの方にも興味を持ってもらえ、軟X線の散乱システムが新規構築予定となったので、そことの情報館も密にし、そこでの測定確立も今年度は目指し、現在真空チャンバーの設計協力にも携わっており、ここでの利用も含め利用できるビームタイムの増加に務めることにより研究の推進力を上げていく。 問題となっている最適な試料作成については、光配向膜を使った配向試料の作製や厚さの制御など、現在試行錯誤を繰り返して良好な試料作成を目指している。また光学系、測定系についても加熱装置からの輻射熱による検出器への影響や、試料導入部などの問題点があるが、ビーム利用前にこれらの改良を加えていき、計画通りの研究が遂行できるように努める。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの影響もあり、国際会議への出張がなかったのと分子研の利用実験では分子研から旅費がいただけたため、主にその分の使用額が減少した。今年度の研究成果を受けて、次年度にはもう少し試料基板への投資が必要と考えており、使用計画はできている。
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Research Products
(4 results)