2021 Fiscal Year Research-status Report
Development of a radiation detector based on perovskite semiconductors
Project/Area Number |
21K12525
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Research Institution | Kyoto College of Medical Science |
Principal Investigator |
佐藤 敏幸 京都医療科学大学, 医療科学部放射線技術学科, 教授 (70395218)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 放射線検出器 / 有機無機半導体 / ペロブスカイト半導体 / 結晶成長 / 晶析 |
Outline of Annual Research Achievements |
X線画像検出器の広視野、高感度、高空間分解能のために、ペロブスカイト半導体を用いた放射線検出器の開発を行っている。ペロブスカイト半導体を放射線検出器として動作させるには、高エネルギーのX線に対して十分な感度を得るための半導体層の厚膜化、S/N比を上げるための暗電流の低減という2つの課題を解決する必要がある。本研究ではペロブスカイト半導体膜の厚膜化と、暗電流低減のための電荷注入阻止層の開発を行い、検出器としての最適素子構造を見出し、その動作検証を実施する。 【半導体膜の厚膜化】ペロブスカイト溶液を基板上に滴下し、晶析によってペロブスカイト膜の厚膜化を図るには、十分な量の溶液を基板上に滴下保持する必要がある。そのため、開口径13mmφ、厚さ50μmのSiゴムを基板上に貼り付け、この中に溶液を滴下保持するようにした。ペロブスカイト溶液は沃化鉛、沃化メチルアンモニウムを有機溶媒に溶かして作製する。有機溶媒の種類によって半導体膜の結晶性と表面状態が大きく変わることを見出し、有機溶媒の極性の指標となるドナー数、アクセプタ数に着目し有機溶媒を選定した。有機溶媒と沃化鉛と沃化メチルアンモニウムは溶液中では前駆体を形成しており、有機溶媒との結合状態の強さによって、結晶化の速度が変化する。本研究ではNMPとGVLの混合溶媒を使用することで、200μm前後の膜厚で均一な多結晶膜を得た。 【電荷注入阻止層の成膜】電荷注入阻止層の候補となる三硫化アンチモン層の成膜を電子ビーム蒸着装置で実施した。膜厚および、面内均一性の評価を行い、検出器作製に問題ないことを確認した。また、有機系p形半導体材料、無機n形半導体材料をスピンコート法で成膜し、膜厚および均一性を評価した。これらの膜をスピンコート法で作製した薄膜ペロブスカイト膜と組み合わせ、電流電圧特性を評価し、ダイオード特性を示すことを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の主たる研究目標は厚膜化において100μmの膜厚の達成と下地膜の有無よって表面状態がどのように変化するかを見極めることである。また電荷注入阻止層の作製においては、一般的なp形、n形膜を形成し電流電圧特性の変化を調べることと、新たに選定した三硫化アンチモン膜の成膜に取り組むことである。 【厚膜化】厚膜化の目安である100μmの膜厚に対し、実績の項で述べたような手法により200μmの膜厚形成が達成できた。X線回折により成膜したペロブスカイト膜の構造を評価し、ペロブスカイト結晶であることを確認した。ガラス基板、ITO基板、TiOx膜上に厚膜のペロブスカイト膜を作製し表面状態との関連を調べたが、特に下地膜との関連は見られなかった。むしろ、表面状態に大きく影響を与えるのは、ペロブスカイト溶液の有機溶媒の組成であることを新たに見出した。 【電荷注入阻止層の成膜】電荷注入阻止層の働きを調べるためにスピンコート法によって薄膜(膜厚約1μm)のペロブスカイト膜を作製し、その上下にp形、n形の膜を積層し、素子を作製した。n形膜としてTiOx、p形膜としてPEDOT、TOP-HTM-αを使用し、電流電圧特性を評価したところ、ダイオード特性を示した。これによって、電荷注入阻止の機能が発現していることを確認したが、逆方向電圧が1V程度と低い値を示した。スピンコート法による膜は針状結晶が絡まった結晶形態をしており、ピンホールによる耐圧不良も考えられるため厚膜による評価を今後行う。三硫化アンチモン膜は電子ビーム蒸着装置によって成膜し、膜厚および面内分布を評価し素子作製には問題の無いことを確認した。 厚膜化および電荷注入阻止膜の単体評価は完了しており、この結果をもとに今年度は当初の予定通り厚膜上への電荷注入阻止層の成膜と評価を実施する。以上のことから研究は予定通り進捗していると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は昨年度に引き続き、ペロブスカイト膜の厚膜化に取り組む共に、暗電流低減効果の確認および、X線検出特性評価のための評価系の構築を行う。 【厚膜化】昨年度は溶液晶析により200μm前後のペロブスカイト膜の成膜を実現した。今年度は膜の経時安定性および更なる厚膜化の可能性を調べる。本研究の目標は100μmの膜厚で検出器を製作することであるが、検出器の特性向上のためには厚膜化の検討も必要と考えている。膜厚を変えて検出器を作製し評価することで、膜中の電荷の走行状態を推測することも可能となる。 【暗電流低減効果の確認】今年度は厚膜化したペロブスカイト膜上に、電荷阻止層を成膜し電流電圧特性を測定する。電荷阻止層としては、昨年単体で成膜したSb2S3膜を使用する。また、ペロブスカイト太陽電池で使用されるTiOx膜、有機n形材料、有機p形材料も併せて評価し、電荷阻止層の挿入位置や組み合わせを変え、評価を行う。暗電流低減効果とともに、耐圧の向上効果があるかも合わせて見極める。また、電極材料の違いによる暗電流の変化についても別途確認を行うとともに、電荷注入阻止層として三硫化アンチモン以外の半導体膜の検討を行う。 【評価系の構築】X線検出特性として、感度および時間応答性の評価を行う。そのために、管電圧、管電流、X線管からの距離をパラメータとした素子へのX線照射線量をあらかじめ測定し、感度への換算が行えるように準備を行う。合わせて特性の比較評価対象となるCdTe検出器の準備を進める。 一方で、基板上に作成したペロブスカイト膜を放射線検出器として組上げる。そのため、素子化するためのモールド、配線方法を確立し、パッケージ化を行う。検出器の評価のために、パッケージ化した素子を組み込む筐体の製作を行う。
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Causes of Carryover |
学会参加費用(旅費)として確保していたが、学会がリーモート参加となり、旅費が発生せず差額が生じた。次年度の学会参加費用として使用する予定である。
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