2023 Fiscal Year Research-status Report
自己の効果的・肯定的変化を促すインテリアデザイン手法の構築
Project/Area Number |
21K12574
|
Research Institution | Osaka Sangyo University |
Principal Investigator |
松田 奈緒子 大阪産業大学, デザイン工学部, 教授 (60556900)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
|
Keywords | インテリア空間 / インテリア要素 / 自己の変容 / 文化比較 / 家具 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目であるR5(2023)年度は、①約15年前に調査を実施した対象者(フランス在住者)を対象とした実態調査、②①の調査対象者を対象にインテリア要素の要となる「家具」に対する意識と実態に関する調査、③文化的背景の違いがもたらす影響の分析、の3つを試みた。 ①について、フランス国立建築大学パリ・ラ・ビレット校を拠点とし、過去の調査対象者(16名)の現在の居場所の確認を、当時、彼らを紹介して頂いた主に大学教員を通じて行ったものの困難を極めた。そこで、同等以上の資料を得るため、フランスにおいて、芸術・文化に造詣が深く、よりセンシティブにインテリア空間への影響が表れやすいと考えられる16名を対象に同様の調査を実施した。これらの対象者は、パリ市内・パリ近郊・地方都市に居を構えており、一軒家は3軒、集合住宅内は13軒であった。年齢は、35歳から85歳と幅広く、それぞれのライフステージにおける自己の変容とインテリア空間の変化の関係性について抽出した。 ②については、①の調査対象者16名を対象に、現在のインテリア空間における家具が、ご家族から受け継がれたものなのか、ご自身で入手したものなのか、また、将来誰かに譲りたいものなのか、についてその実態と意識を抽出した。彼らにとって家具が、どの様に自己の効果的・肯定的変化を促すインテリアデザイン手法の一つとなり得るか、を示唆する資料として有意義であると考えられる。 ③は、自己とインテリア空間の関係性について文化比較を行うべく、現地フランスでしか入手できない資料の収集に努めた。具体的には、インテリアデザイナーや建築家によりデザインされた住宅・インテリア空間、および、家族や個人の内面と住まいとの関係性について展示がされている美術館等を調査・見学し、空間を自己化する上での効果的なインテリアデザイン手法について数々の資料を入手した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度は、約15年前に調査を実施したフランス在住者を対象に調査の実施を試みたものの、15年の時を経ているため、調査対象者の捜索に多くの時間を要した。しかしながら、今回の調査に対する承諾を得られた人は残念ながらいなかったため、同等以上の資料を得るべく、調査手法の再検討を行った。その分、2023年度の計画であった、実態調査の結果から得られたデータを基にした調査対象者の現在の特性(自己の表出実態・意識構造・表出の程度等)の抽出や、過去の結果との比較検討については、やや遅れている。 その一方で、自己の変容とインテリア空間との関係性について、文化比較の観点からも考察を深めることができ、その意味においては、2024年度の計画である、自己の変容とインテリア空間との関係性の構造化に向けて、前倒しで進めることができている。
|
Strategy for Future Research Activity |
2024年度の計画を予定通り実施する。具体的には、自己の変容とインテリア空間の変化との関係性を考察し、その構造化を試みる。さらにインテリア空間の側から、精神的に困難な状況にある人々の心理的支援・回復策の検討と提案を行う。また、承諾は得ているものの、訪問が実現できていない調査対象者数名の実態調査を実施する予定である。なお、もし、新型コロナの影響等で訪問が叶わない場合には、インテリア空間の写真画像はメール添付で送ってもらい、インタビューはオンラインで実施する等の代替案にて対応していきたい。
|
Causes of Carryover |
2023年度の研究実施に当たり、訪問実態調査や資料収集のための旅費、交渉に伴う謝礼や調査対象者への謝礼、専門知識の提供者への謝礼に主に費やした。しかしながら、日本国外であったことや、15年の時を経ていたため、調査対象者の捜索や代替調査の実施に、想定以上に時間を必要とし、データ整理補助の人件費や成果報告についての費用が持ち越された。 今年度は、自己の変容とインテリア空間の変化との関係性を考察し、その構造化を試みるため、実態調査補助者及び資料の集計補助に対する謝礼、論文翻訳・校閲のための謝礼、研究成果発表のための学会旅費・参加費・論文投稿料及び印刷代等に出費が見込まれる。
|