2021 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the role of rear space in emotional processing
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21K12614
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
川島 尊之 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (50401203)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | auditory processing / sound localization / emotion / expectancy / anisotropy |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度の研究実績について、本研究の目的と2021年度の実施計画を簡単に振り返ったのち述べる。 本研究の目的は人間が周囲の全方位の対象を、感情の点でどのように処理しているかについて特に異方性の観点から実証的に理解を進めることである。具体的には感情に関わる認知処理過程の前方、後方間の異方性を確認、再現する等を通して目的を達する(例えば目的の1つは“後方提示による不快化”の研究となる)。本研究の成果は、感情を介した人間の適応と適応過程に関する生態的に妥当な理解を深め、さらには感情をより強く喚起させる提示条件に示唆を与えるなどの可能性がある。 2021年8月までに研究環境の一部を整備し、加えて2021年度中に研究の3つの目的のうちの一つである、“後方提示による不快化”(音を背後から提示すると、前方から提示する場合に比べて、より不快となる傾向)に関する実験を7か月間行う計画であった。研究環境の一部の整備とは、刺激提示環境を維持するための装置(組立防音室)の購入設置と、生理指標を測定するための瞳孔径測定装置等の購入などを指す。 研究実績の概要:①2021年度では、研究環境の一部の整備について一定の成果を予定可能な研究環境を準備した。ただし納期の短縮のため代替機器を購入したため、計画当初と比べると測定指標の一部を欠く等のかたちとなる点については今後適宜拡充等の対応を考える。② 後方提示による不快化に関する実験について研究環境の評価と、予備的な聴取を完了した。本計画では、実験の参加者が、スピーカから提示した音の前後の方位をある程度聞き分けることが望ましいが、周囲の騒音、雑音の程度、実験環境内の反響等、音響的な環境によってはこれが難しくなる。この点について研究環境における音響的な特徴を測定、評価し、予備的な聴取を経て、計画していた実験が可能であることを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究用スペースの不足により研究機関内に計画当初予定していた組立て式の簡易的な防音室を設置することができないことが明らかになり、交付申請時には、より限定的な機能の類似の組立て防音室を8月までに設置する予定であったが、これが消防法等に関わる機器等の設置手続き等を経ることで、2021年12月中旬まで設置されなかった。実験に先立ち、実験環境内の音響的な特徴を計測、評価することが必要であるため、防音室が設置されるまで実験の事前準備を完了することは困難であったため、これは現在、計画が遅れている主な理由となる。 同時に、利用を予定していた瞳孔径、皮膚電位反応(GSR)等の計測のための機器と、オーディオインターフェースを、最近の半導体不足等の影響により、販売メーカー等から購入することができず一部準備が難しいこと、加えて代替品を購入、手配するために、1か月程度計画外の時間を要したことも影響は先の理由に比べれば限定的ではあるが遅延の理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究には具体的な3つの目的がある。すなわちは第一に感情に関わる認知処理過程の前方、後方間の異方性を確認、再現し(目的1)、第二に異方性における感覚間統合の役割を研究し(目的2)、第三に異方性に主に関わる身体座標系について研究する(目的3)。 本計画の三つの目的のうち目的1に関する実験を、2022年度において実施する。2022年の10月までに後方提示による不快化について、2022年の11月から2023年の1月までに感情と空間の交互作用についてこれまでの研究間の異同をふまえながら再現可能性を研究する予定である(目的1)。2022年度中の成果の一部を2022年度内に国内学会で学会発表を行う。 “感情処理過程の異方性における感覚モダリティ間の統合(目的2)”については、2023年2月から2023年6月まで感情と空間の交互作用を対象に実験を行い、2023年7月から9月に後方提示による不快化を対象に感覚モダリティ間の統合の影響について研究を行う。ただし仮に過去の研究報告のうち再現できない条件があったときには、再現性を確認できた条件について先行して感覚モダリティ間の統合の影響を研究する。2023年9月までの成果については、2023年度中に国内学会、国際学会で学会発表を行う。 “感情処理過程の異方性に関わる身体座標系(目的3)”については、感情と空間の交互作用を対象に2023年10月から2024年2月にかけて異方性に関わる身体座標系について研究し、2024年3月から後方提示による不快化を対象に異方性に関わる身体座標系を研究する。ただし目的2においてと同様、過去の報告のなかで再現できない条件があったときには再現性を確認できたものについて、先に異方性に関わる身体座標系について研究する。2023年度内の成果について2024年の3月に日本音響学会の学術大会で発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は次の通りである。①研究の実施状況の遅れにより、予定していた旅費と謝金の支出が生じなかった。②購入後に利用を予定している実験機材の一部(代替でないオーディオインターフェース、生理指標の計測システム、音響レベル測定に関する機器)の購入が、納期の遅れ等により、年度内に終わらなかった。 2022年度以降の旅費、謝金、実験機材の購入に用いるため一部を次年度の利用とした。研究目的達成の観点から、実験機材の購入に優先的に用いる計画である。
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