2022 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of the role of rear space in emotional processing
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21K12614
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Research Institution | Teikyo Heisei University |
Principal Investigator |
川島 尊之 帝京平成大学, 健康メディカル学部, 准教授 (50401203)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | auditory processing / emotion / anisotropy |
Outline of Annual Research Achievements |
本計画の具体的な目的は3点あり、すなわち第一に感情に関わる認知処理過程の前方、後方間の異方性を確認、再現し(目的1)、第二に異方性における感覚間統合の役割を明らかにし(目的2)、第三に異方性に主に関わる身体座標系について研究することである(目的3)。2022年度は目的1について実験を行い、日本音響学会の聴覚研究会で結果等を発表した。感情評定が付されたデータベース(IADS-2, IADS-E)から選択した14種類の音(音楽、人の生活音等)を用いて、60人の大学生を対象に実験を行った。主な結果は以下である:(1) 感情処理過程について、音が喚起する覚醒度(どれだけ興奮などを喚起させるか)についての評価は、同一の音であっても後方に提示されるときに、前方に提示されるときよりも高くなること(評定値に関して7から8%程度の変化)、そしてその傾向は後方に音を提示する際の音のレベルの変化(基本的にレベルの減少)を必要としないこと、(2)覚醒度の変化は音の定位の反応時間を統計的に有意に変化させず、この点で認知の効率に影響しないこと、 (3) 音が喚起する快・不快の感情については、過去のいくつかの研究報告の結果と異なり、後方から音を提示することで音がより不快になるという明確な傾向が得られないこと、(4)過去に直接研究されてこなかった、音が喚起する感情の被コントロール感については、音の前後位置の異方性が見られないこと。 様々な対象が喚起する感情について快不快、覚醒度、被コントロール感という3つの次元で評価することが広く行われてきた。実験の結果は覚醒度の処理が人間の前後の空間で異なることを示している。さらに得られた結果は覚醒感の喚起が、後方の出来事や対象へ人間が適応的に反応することに寄与している可能性と矛盾しない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
計画の遂行が遅れている主な理由は2021年度の報告に記したように、簡易防音室の設置が最初期の予定より6か月程度遅れたこと、生理的な指標を測定するための機器の納入が半導体の供給不足傾向のために予定よりも遅れたことにより実験の開始時期が遅れた点にある。 2021年度末の時点では、本計画の3つの目的のうち目的1に関する実験を、大きく2つの種類について2022年度中、2023年の1月までに行う予定であったが(後方提示による不快化と、感情と空間の交互作用についての2種類)、2022年度内には後方提示による不快化の確認、再現については実験を完了したものの、感情と空間の交互作用の確認、再現については予定の一部についてのみしか実験を行うことができなかった。2023年1月までに終える実験の予定が達成されなかった遅れの背景の一部は、最初の実験データの処理(統計モデルのあてはめ)に予定よりも時間がかかったためであった。実験データの分析方針は2023年度以降の実験結果についても類似する計画であり、この要因による以後の同様の遅延は見込まれない。
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Strategy for Future Research Activity |
計画の目的1に関しては、2022年度中に感情処理過程についての異方性自体を確認、ある程度再現することができたため、2022年度中の実験結果を以て一定の成果を挙げたと考え、感情と空間の交互作用についての研究計画の一部を研究期間内ではとりやめる。具体的には、感情と空間の交互作用についての実験は定位課題と感情同定課題の2つの課題について行う予定であったが、2022年度内に終えた定位課題についてのみの実施とし、感情同定課題の実施を計画しない。これは研究計画の目的である感情処理過程についての異方性は、感情同定課題を用いることなくある程度研究可能であると示されたためである。覚醒度についての異方性が確認されていなかった2021年度末の時点ではこの点が明らかではなかった。 これを踏まえ、特に覚醒度に注目しながら感情処理過程の異方性について感覚間統合の影響を調べるため(目的2)、2023年の5月から10月までの5か月間で関連する実験を行い、この成果については2023年12月のアメリカ音響学会で公表する。 異方性に関わる身体座標系の役割(目的3)については2023年の11月以降に5か月間で実験を行う。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた主な理由は、2022年度に国際学会での発表を予定していたが実際には行うことができなかったため2023年度に予定をしているためであり、加えて実験参加者の体の姿勢を変更するための装置の購入を2023年度に持ち越したためである。
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Research Products
(1 results)