2022 Fiscal Year Research-status Report
Neural mechanisms of "brain timer"
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21K12618
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
生塩 研一 近畿大学, 医学部, 講師 (30296751)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 時間知覚 / 前頭前野 / 運動前野 / 認知科学 |
Outline of Annual Research Achievements |
異種感覚刺激を用いた時間弁別課題では、引き続いて呈示する2つの時間長のそれぞれを視覚刺激と聴覚刺激のいずれかで示すので、それらの組み合わせは、視覚-視覚、視覚-聴覚、聴覚-視覚、聴覚-聴覚の4パターンとなります。実験の結果、その4つのパターンのうち、聴覚-聴覚だけ他のパターンに比べて正答率が低く、聴覚刺激より視覚刺激の方が時間長の計測がしやすいことがわかりました。この課題を遂行中に前頭前野のニューロン活動をシングルユニットレコーディング法で計測しました。その結果、時間長の呈示期間と1番目の時間長呈示後の遅延期間では、時間長を呈示する刺激で視覚か聴覚のどちらかに、それから刺激の順序で1番目か2番目のどちらかに選択的に応答するニューロンが多数あることを見出しました。その一方、2番目の時間長の後の遅延期間では、感覚種によらず1番目の時間長が長いか短いか応答するニューロンが半数近くを占めました。これらの結果から、前頭前野ニューロンはタスクの前半では感覚種別の時間計測を行い、タスクの応答に向けては感覚種によらない情報統合を行っていることがわかりました。また、3つの時間長カテゴリを区別し予め対応付けされた時間長を生成する時間弁別課題では、短い時間長は0.8秒、中間の時間長は1.6秒、長い時間長は3.2秒としてCueで視覚刺激で提示しました。Cueが短い時間長であれば、生成は長い時間長(3.2~4.8秒)を生成すると正解で、Cueが中間の時間長に対しては1.6~3.2秒の時間長生成を、Cueが短い時間長では0.8~1.6秒の時間長生成を正解としました。実験の結果、背外側前頭前野は時間計測に、内側運動前野は時間生成に関わっていることがわかり、研究成果について2022年度に学会発表を2件行いました。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
異種感覚刺激を用いた時間弁別課題では、1番目の時間長呈示期間では、視覚刺激だけに応答したニューロンが77%、聴覚刺激だけに応答したニューロンが11%、両方に応答したニューロンが12%、2番目の時間長呈示期間では、それぞれ、62%、23%、15%でした。聴覚刺激だけに応答するニューロンの数が少ないことが、聴覚ー聴覚の試行で正答率が低いことと関係している可能性が考えられます。前頭前野のニューロン活動を解析した結果、タスクの前半では感覚種別の時間計測を行い、タスクの応答に向けては感覚種によらない情報統合を行っていることがわかり、その研究成果を論文にまとめたことから、この課題についてはサルのトレーニングやニューロン活動記録は一旦休止し、3つの時間長カテゴリを区別し予め対応付けされた時間長を生成する時間弁別課題でのトレーニングやニューロン活動記録実験を集中的に行っています。その課題では、背外側前頭前野には、Cueの間に発火頻度が徐々に高くなっていくニューロンや長いCueの後の遅延期間だけ発火頻度が高くなるニューロンが、内側運動前野では、Cueが短いほどCue期間の後の遅延期間で発火頻度が高いニューロン(Sタイプ)、その逆に、Cueが長いほどCue期間の後の遅延期間で発火頻度が高いニューロン(Lタイプ)などが見出されています。Lタイプが57%、Sタイプが3%と、Lタイプが圧倒的に多いようです。背外側前頭前野と内側運動前野で、時間生成の期間に発火頻度が高くなるニューロンが多く、Cueの長さに依存するニューロンは内側運動前野に多い傾向にあるようです。2頭目のニューロン活動記録実験に入った段階ですが、2022年度は長引くコロナ禍の影響もあり実験に割ける時間が減り、また、記録中のサルでの記録実験もいろいろな不具合があって思うように進められず、やや遅れている状況です。
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Strategy for Future Research Activity |
3つの時間長カテゴリを区別し予め対応付けされた時間長を生成する時間弁別課題については、新たなサルのトレーニングを急ぎながら、ニューロン活動記録実験をしているサルからのデータ取得を精力的に行う予定です。この課題では、現在は前頭前野と内側運動前野からしかデータ取得できていないので、脳の深部にある大脳基底核のニューロン活動記録実験にも挑戦したいと考えております。課題が充分にこなせるようになった段階でニューロン活動をシングルユニットレコーティング法で記録します。記録にはタングステン電極(FHC)を使用し、スパイクソーティング(Alpha Omega社)で単一ニューロンからの信号を分離します。タスクの制御やデータの取り込みはTEMPOシステム(Reflective computing社)を使用します。当課題では、まずサルをモニター画面とその下にボタンが設置されたパネルに対面させます。サルがボタンを押すとPrecueとして白色の四角がモニター画面に表示されタスクがスタート。続いてサルが計るべき時間長を緑色四角の視覚刺激(Cue)が表示されている間の時間で提示し、時間長が終了するとPrecueと同じ白色四角が遅延期間として表示されます。続いて、赤色四角が表示され、時間長生成のスタートとします。サルはタスクのスタートからボタン押しを継続していますが、所定の時間が経過し終わったときにボタンから手を離すことで時間長の生成が完了します。ボタンから手を離すと赤色四角が消えるので、赤色四角が表示されている間が時間長の生成となります。Cueの時間長と生成する時間長は「研究実績の概要」に記載した通りです。Cueで提示される時間長は試行毎にランダムとします。当該ニューロン活動記録実験がうまく進まない場合は、異種感覚刺激を用いた時間弁別課題では、記録済みのデータについてその解析を進めます。
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Causes of Carryover |
2022年度は長引くコロナ禍の影響もあり実験に割ける時間が減り、また、記録中のサルでの記録実験もいろいろな不具合があって思うように進められませんでした。記録用のタングステン電極などの消耗品をあまり使わなかったため、結果的に予算を持ち越すこととなりました。2023年度は、コロナ禍の影響も小さくなってきましたので、昨年度の遅滞分を取り戻すべく精力的に実験を進める予定です。繰り越した予算はそのために必要な物品の購入に充てる予定です。
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