2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12635
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
山本 憲隆 立命館大学, 理工学部, 教授 (40210546)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオメカニクス / 力学的適応 / 腱・靭帯 / 生体分子 / コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
ブタ腱由来の酸可溶性Ⅰ型コラーゲン溶液からコラーゲンゲルや原線維を再構成させ,この過程で起こるコラーゲン分子間の力学的相互作用を水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いて解析し,再構成された原線維の微細構造観察と引張試験を行った. 温度37℃に設定した恒温槽内に,水晶振動子を装着したウェル型セルを設置した.その後,コラーゲン溶液をセルのカップ部にマイクロピペットを用いて滴下した.次に,再構成用緩衝液を滴下して,コラーゲンゲルを再構成させた.得られた周波数の変化から,最小サセプタンス周波数と損失係数を算出した.その結果,pH8.9で,コラーゲンゲルの吸着量と粘性が最も高くなることがわかった.次に,水晶振動子上に吸着したコラーゲンゲルの微細構造を原子間力顕微鏡(AFM)を用いて観察した.ゲルの内部に再構成されたコラーゲン原線維が観察され,これらには生体の原線維と同様の周期構造が見られた. 再構成された原線維の力学的性質は独自に開発した引張試験システムを用いて調べた.試験は倒立顕微鏡のステージ上で,暗視野下で行った.ステージ上に固定したマイクロマニピュレータに取り付けたマイクロ針を用いて,原線維を取り上げ,その両端をマイクロ針に巻きつけた.その後,生理食塩水中で原線維が破断するまでマイクロ針を移動させた.その結果,原線維の引張強度と接線弾性係数は,pH8.8で最大になった. コラーゲン溶液をマイカ基板に滴下してコラーゲン分子を基板に吸着させ,AFMを用いて微細構造観察を行うとともに,フォースカーブ測定機能による微小押込試験を行った.その結果,長さ300nm程度の棒状のコラーゲン分子が観察できた.探針を試料に押込んだときの押込深さは平均で0.53nm,探針に働く力は0.71nN,コラーゲン分子の弾性係数は0.25GPaであった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
酸可溶性Ⅰ型コラーゲン溶液から原線維を再構成させ,この過程で起こるコラーゲン分子間の力学的相互作用をQCMを用いて解析するとともに,再構成原線維の微細構造観察と引張試験を行った.さらに,コラーゲン分子単体の構造観察と弾性係数の計測を行うことが可能となり,当初の計画以上に研究は進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度に引き続き,ブタ腱由来の酸可溶性Ⅰ型コラーゲン溶液からコラーゲンゲルや原線維を再構成させ,この過程で起こるコラーゲン分子間の力学的相互作用をQCMを用いて解析し,再構成された原線維の微細構造観察と引張試験を行う.令和4年度では,pHの値をより広範囲に変化させて実験を行い,pHの影響を調べる.さらに,再構成緩衝液中の炭酸水素ナトリウムや塩分濃度などの影響について検討する.
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Causes of Carryover |
理由:消耗品として計上した水晶振動子,AFMカンチレバー,薬品などを,元から現有していたもので一部賄うことができたので,新たに購入する量が少なくて済んだ.また,コロナの影響で学会の講演会がオンライン開催となり,旅費等が不要となった.
使用計画:令和4年度においても,令和3年度と同様の実験を実施するので,水晶振動子,AFMカンチレバー,薬品などの消耗品を購入する.また,画像処理ソフトウエアを購入し,得られた顕微鏡画像のより詳細な解析を行う.
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