2021 Fiscal Year Research-status Report
心筋機械感受性制御におけるROSシグナリングの役割とその心不全治療への展開
Project/Area Number |
21K12640
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
入部 玄太郎 旭川医科大学, 医学部, 教授 (90284885)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山口 陽平 旭川医科大学, 医学部, 助教 (40831912)
貝原 恵子 岡山大学, 医学部, 技術専門職員 (60638641)
金子 智之 旭川医科大学, 医学部, 助教 (80638643)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 機械感受性 / 活性酸素 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、単離心筋細胞で観察される伸展誘発性ROS産生増加による筋小胞体カルシウムハンドリングの修飾がどのように心筋メカニクスに影響しているかを、野生型およびNOX2ノックアウト(KO)マウス心筋細胞の伸展誘発性カルシウムトランジェント変化、心筋細胞長さ張力関係による力学解析から検討した。 その結果、心筋細胞の収縮性の指標となる収縮期末長さ張力関係の傾き(最大弾性率)は野生型に比べてNOX2KOマウスでは有意に低下していた。伸展によるカルシウムトランジェント波形は野生型のマウス心筋細胞では変化が無かったが、NOX2KOマウス心筋細胞においては細胞内カルシウム濃度の上昇率が最大に達するまでの時間が伸展によって有意に遅延することが明らかとなった。 NOX2はリアノジン受容体を刺激することが知られているが、このカルシウムトランジェントの変化がNOX2による伸展誘発性ROS産生の有無によって説明ができるのか、また、この変化がNOX2KOマウス心筋の収縮性低下を説明できるのかをコンピュータシミュレーションによって検討した。心筋細胞数理モデルとしてIribe-Kohl-Nobleモデルを用いた。このリアノジン受容体モデルの活性化レートを上げ、同時にリアノジン受容体からのカルシウムリーク率を上げることでNOX2がリアノジン受容体に及ぼす影響を再現した。前者はカルシウムトランジェントの立ち上がりをやや早め、ピークを上昇させるが、後者はピークを減弱させる効果があり、結果としてピークは変わらず立ち上がりの早いトランジェント波形となった。また、前者は発生張力を増加させる効果があり、後者は発生張力をわずかに減少させる効果があるがその効果は弱く、結果的に収縮力は増加することとなり、細胞実験の結果を再現することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究計画で使用する遺伝子改変マウス(TRPC3ノックアウトマウス)の準備が当初の予定通りに進まなかったので、本年度は令和4年度予定の研究計画を実施した。成果としては当初の令和4年度予定計画のほぼすべてを完了することができ、現在論文投稿準備中であるため、おおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
研究代表者のこれまでの研究成果により、伸展誘発性ROSの上流には伸展誘発性の電子伝達系の活性化とそれによるミトコンドリア膜電位の過分極があることがわかっている。パネキシンヘミチャネルは機械刺激によってATPを細胞外へ放出するが、伸展誘発性ミトコンドリア過分極がATP放出に伴う電子伝達系の活性化による二次的な現象なのか、それとも電子伝達系が直接伸展刺激によって一次的に活性化されているのかを確認し、さらに流出ATPにより活性化されるプリン受容体(P2Y受容体)によるTRPC3活性化と引き続き起こるであろうNOX2活性化の関係をTRPC3ノックアウトマウスと薬理学的阻害を用いて明らかにする。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、予定していた打ち合わせが全てオンライン開催となったため残額が生じた。よって、次年度の必要消耗品等の支出にあてることとした。
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