2022 Fiscal Year Research-status Report
睡眠時における大脳皮質領域間の相互作用を定量する指標の提案
Project/Area Number |
21K12646
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
安部 武志 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (10819402)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浅井 義之 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (00415639)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 高次スペクトル解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
睡眠時に皮質領域での神経活動で生じる生体シグナル同士の非線形な相互作用を定量するため、本研究課題ではcross-bicoherenceを用いた高次スペクトラル解析の手法を提案している。パワースペクトル密度に代表される従来のスペクトラル解析と高次スペクトラル解析を組み合わせて補完することで、上記の相互作用をより正確に理解することができる。睡眠検査への応用においては、EEG計測結果の時系列からこれらの統計量が推定される。計測結果は計測誤差とともに生体由来の微量な変動の影響を受けるため、その影響の大きさについての理解が解析結果を正しく判断する上で欠かせない。 我々はEEGの時系列のような特徴的な周期を持つ多変量の生体シグナルを表現する統計過程モデルを作成し、時間平均パワーにもとづくシグナルノイズ比(SNR)を検討した。Cross-bicoherenceが対象とする3つの変数からなるモデルに対し、着目するシグナルとノイズの性質の違いによって複数種類のSNRが定義される。これらの種類は、相互作用の対象となって増幅される内的なノイズと計測ノイズのような外的なノイズとの区別等に対応する。 異なるSNRについて解析解およびシミュレーションによる推定値を得ることで、時系列間の相互作用が畳み込みで表現される場合、相互作用の強度に対するこれらのSNRの応答性が異なることを示した。また、既に本研究課題で明らかにしたcross-bicoherenceの確率共鳴様の振舞いとの関連が示唆された。 この知見は、睡眠検査のような臨床の環境で高次スペクトル解析を応用する際に、計測値から推定された解析結果を解釈する上で有用である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全3年の補助事業期間のために研究実施計画で示した全3項目のうち、最後の項目3に着手する準備が整っている。 2年目にあたる2022年度では、当初計画の項目2で実施予定だった睡眠実験の代替となるデータ取得のため、本事業に利用可能なデータについて公開されている睡眠検査データベースの調査を行った。 一方で、研究成果を発表するための雑誌論文掲載に至っておらず、この点でやや遅れが生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
全3年の補助事業期間の最終年度にあたる2023年度では、PhysioNet <https://physionet.org/> 等の既にデータ取得済みで公開されている睡眠検査データベースを利用し、研究実施計画の項目4にあたるデータ解析を進める。 睡眠についての神経科学に関する国際学会に参加し研究成果を発表すると同時に、提案手法を実装したプログラムを広く一般に公開し利用可能にするため高次スペクトル解析のためのRパッケージrhosaを更新する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症流行の影響のため2022年度に海外渡航を見合わせたこと、および論文投稿料が次年度に繰り延べになったことが次年度使用額が生じた理由である。 2023年度に国際学会出席のための出張費用および論文投稿料に利用する予定である。
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