2021 Fiscal Year Research-status Report
細胞社会は互いのコミュニケーションをどのようにとっているか:複雑系の視点
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21K12651
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Research Institution | Dokkyo Medical University |
Principal Investigator |
岸本 聡子 獨協医科大学, 医学部, 講師 (10511488)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 健一 獨協医科大学, 医学部, 准教授 (90587974)
張山 昌論 東北大学, 情報科学研究科, 教授 (10292260)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 創傷治癒 / 細胞間コミュニケーション / 生体シミュレーション / 炎症性サイトカイン / 細胞外マトリクス / 複雑系 / マルチエージェントシミュレーション |
Outline of Annual Research Achievements |
生きた組織において骨髄由来の細胞と間質細胞の活性化を蛍光色素で区別するため、2種類の蛍光タンパク(DsRed, GFP)のトランスジェニックマウスを使用した実験系を構築した。活性化した間質細胞で赤色蛍光タンパクを合成するDsRedマウスをX線照射によって骨髄抑制し、緑色蛍光タンパクを合成するGFPマウスの骨髄細胞を移植した。作製したマウスの精巣上体周囲脂肪に外科的に傷害刺激を加え、再生する脂肪組織をタイムラプス蛍光顕微鏡で観察した。これにより、骨髄細胞が傷害箇所に空間配置される様子、空間の網羅度、移動軌跡、細胞間距離、間質細胞が活性化する前後の時系列の情報を得ることができる。その結果、急性炎症期に骨髄から動員された細胞は、組織内では傷害部位に集合するという明確な目的をもって遊走する姿が捉えられ、血管内では傷害部位近くの血管内を行き来しながら血管外遊走する細胞も観察された。 このような急性炎症における骨髄細胞、活性化する間質細胞、産生・分解されるサイトカイン、細胞外マトリクスそれぞれのふるまいを模擬する生体シミュレーションを、空間微分と時間微分の異なるアルゴリズムで再現した。空間微分は、細胞周囲の全方位にセンサーがあり、サイトカインの濃度がより高い方向に誘因されるアルゴリズムである。時間微分は、細胞がランダムに探索行動をする過程で感知するサイトカイン濃度の時間変化を定量し、増加した場合をシグナルと定義するアルゴリズムである。空間微分アルゴリズムにおいて細胞は、サイトカインの発生源に「迷いなく」集まってくる。集まった複数の細胞は「シグナルセンサー」を形成し、恒常的にシグナルを維持する。時間微分アルゴリズムにおいて細胞は、サイトカインの発生源に「高い確率で」集まってくる。これまでの結果、生きた組織において観察された骨髄由来の細胞は、空間微分の法則に従って遊走していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
生体での実験系を構築する上で、生理的体動による画像の乱れを改善することに時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
生理的体動による画像の乱れを改善するために吸引ポンプによるスタビライザーを導入し、鮮明な画像取得につなげる。 生体シミュレーションのアルゴリズムを更に改良し、生きた細胞のふるまいを規定する基本法則の妥当性を検証していく。
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Causes of Carryover |
時系列画像データを保存管理するハードディスクの購入が前年度に間に合わなかったため。 データが徐々に蓄積されてきているので、次年度購入する予定である。
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