2021 Fiscal Year Research-status Report
ホスト血管への早期結合を可能とする積層化腹膜シートの構築・選定と癒着防止への応用
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21K12658
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
崎山 亮一 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30408471)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 積層化細胞シート / 癒着防止膜 / 疑似腹膜組織 / 管腔構造 / 細胞間接着の向上 / 3次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、24時間以内にホスト血管と結合できる癒着防止膜を開発し、癒着防止を立証することを目的としている。2021年度は、血管網付3次元腹膜組織の構築を行った。腹膜の主な層である中皮層はヒト中皮細胞株(Met5a)、間質層はヒト線維芽細胞株(NHDF)、血管内皮層は正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用い、積層化技術により腹膜組織に模した層を有する積層化三次元腹膜組織(腹膜シート)を作製した。温度感受性培養皿にMet5a、NHDF、HUVECをそれぞれ播種して、48時間培養した。48時間後、予め準備したゼラチンゲルをMet5aに載せて20℃の低温培養を行い、Met5aをゼラチンに転写した。次に、そのゼラチンをNHDF上において、20℃の低温培養を行いゼラチンに転写し、最後にHUVEC上において低温処理を行い、37℃のインキュベータ内でゼラチンを溶解することで、3層からなる癒着防止腹膜組織を作成した。この癒着防止腹膜の組織体をコンパウンドで固定化し、組織の横断面の切片を作成し、HE染色にて観察した。その結果、積層化から3時間以内に管腔構造が確認された。この管腔構造は、移植体のホストの血管と早期に結合できることが期待される。また、安定した血管内皮細胞層を作成するために、コラーゲンをコートした温度感受性培養皿を検討した結果、HUVEC の接着は向上したが、低温時の剥離が困難であった。さらなる検討が必要である。また、免疫染色(中皮細胞: Cytokeratin、線維芽細胞:Vimentin、血管内皮細胞: CD31)にて細胞染色が行え、細胞シート内の細胞分布を確認中である。さらに、細胞間接着因子のZo-1やオクルーディンの遺伝子発現は、単層よりも3層で増加した。以上より、3層では立体的な細胞間接着が構築され、管腔構造を有するより生体に近い組織の作成に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
積層化して作成する腹膜組織のそれぞれの細胞播種密度と温度感受性培養皿、培養時間の組み合わせに よる細胞シート作製の検討に時間を要した。特に。温度感受性培養皿に播種した時、血管内皮細胞の状態により細胞シートにできる場合とできない場合があった。ここで、血管内皮細胞の培養培地が国内在庫がなく、海外からの輸入しかないとのことで、納期に2ヶ月以上要する状況となった。そのため、年明けから血管内皮細胞の培養を中断せざる負えなくなった。しかし、シートの評価は順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 血管内皮細胞から定期的に細胞シートが作成可能なプロトコールを確立する。 2. 腹膜焼灼癒着モデルの作製:電気メスによりマウスを用いて癒着モデルを検討する。技術が確立されたら、免疫不全ヌードマウスで腹膜癒着モデルとする。 3. 癒着モデルの評価:癒着手術後1週間目に開腹し、癒着の度合いを目視にてスコア化する。免疫染色にて、癒着を評価する。また、血管内皮やリンパ管内皮の新生血管の密度を数値化する。最終的に癒着度合いを確認する。 4. 腹膜癒着モデルへの腹膜シートの移植:移植した組織を中皮細胞マーカ:Cytokeratin、線維芽細胞マーカ:Vimentin、血管内皮細胞マーカ:CD31あるいはVEGFにて免疫染色を行い、蛍光観察と組み合わすことで、移植した細胞とホストの細胞(新生細胞)の区別をつけ、細胞の動向を観察するとともにホスト血管との結合を評価する。次に、移植する積層化腹膜シートは培養後、線維素溶解因子であるtPA、uPA、線維化因子であるTGF-β、線維化解除因子であるHGF発現遺伝子等をRT-PCRにて評価し、癒着解除機序の因子を探索する。
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Causes of Carryover |
海外から取り寄せの培地などの納品が、少なくとも2ヶ月かかるが、納期に保証ができないとのことであった。1月中旬に注文しても、納期が3月末から4月になるため、翌年の発注とした。そのため次年度使用額が生じた。 使用計画は、繰越金はすべて培地などの消耗品に使用する予定である。
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