2022 Fiscal Year Research-status Report
ホスト血管への早期結合を可能とする積層化腹膜シートの構築・選定と癒着防止への応用
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21K12658
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Research Institution | Osaka Institute of Technology |
Principal Investigator |
崎山 亮一 大阪工業大学, 工学部, 准教授 (30408471)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 積層化細胞シート / 癒着防止膜 / 疑似腹膜組織 / 管腔構造 / 細胞間接着の向上 / 3次元培養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、24時間以内にホスト血管と結合できる癒着防止膜を開発し、癒着防止を立証することを目的としている。2022年度は、癒着モデルの開発と癒着モデルへの血管網付3次元腹膜組織移植による癒着防止効果を検討した。マウスは、C57BL/6を用い、癒着モデルは以下の手順で作成した。まず、イソフルランによる吸引麻酔下で正中切開により開腹後、マウスの腸管壁側を出力調整した電気メスで特定の面積を焼灼した。次に、焼灼した腸管の反対側の腹膜を擦過して、腹膜上部の中皮細胞を除去し、焼灼部と擦過部が重なるように閉腹した。その後、温度管理、照明管理された動物飼育室で、十分な餌と水を与えて飼育し、状態を観察した。術後の麻酔から覚めた後は、ゆっくりな動きであったが、その後は健常マウスと同じ動きであった。しかし、3日目、7日目に開腹した結果、両日とも腸管の焼灼部が上部の腹膜に癒着しており、スコア5(癒着の度合いを軽度の1から重度の5の間で表記した)の強い癒着が確認された。当初、手技の問題で死亡するマウスもいたが、実験を重ねるにつれて100%癒着モデルの作成に成功した。次に、細胞を用いた癒着防止膜として血管網付3次元腹膜組織を作成し、電気メスで焼灼後、焼灼部に血管網付3次元腹膜組織を移植した。1週間後、3例中1例でスコア2の癒着の改善が見られた。しかしながら2例では、スコア5の強い癒着が確認された。移植した組織の細胞は、すべてヒト由来であることも、癒着が改善されていないことに影響しているかもしれない。当初の実験計画通り、癒着モデルの開発と3次元腹膜組織の移植が行えた。癒着モデルの開発、3次元腹膜組織の開発、移植による癒着評価できた意義は大きい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、海外からの輸入には納期が不明になることがあり、そのため細胞が培養できないことで組織作成に遅れが出た問題があった。今回、血管内皮細胞の培養培地が不足しないように、ストックがなくなる前に確保し、血管内皮細胞の培養が順調に行えたことで、組織下部に血管内皮細胞からなる腔を有する血管網付3次元腹膜組織細胞シート作製が順調に進んだ。一方、癒着モデル作成時に用いようと考えていたディスポ焼灼機は、海外からの輸入のため納期が不明であった。そこで、既存の電気メスの出力調節を行い、生存可能でかつ癒着が生じるモデルの作製に成功した。また、以前から動物実験に従事していたことで、マウスの麻酔、開腹、手術、焼灼部位への3次元腹膜組織細胞シートの移植、縫合が順調に行えた。これらのことから、概ね実験は順調に進んでいる
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Strategy for Future Research Activity |
最終年となる2023年度は、以下のことを推進する。 1.免疫不全ヌードマウス(ヌードマウス)で腹膜癒着モデルを作製する。 2. 癒着モデルの評価:癒着手術後1週間目に開腹し、癒着の度合いを目視にてスコア化する。HE染色、免疫染色にて、癒着度合いを評価する。 3. 腹膜癒着モデルへの腹膜シートの移植:移植した組織を中皮細胞マーカ:Cytokeratin、線維芽細胞マーカ:Vimentin、血管内皮細胞マーカ:CD31あるいはVEGFにて免疫染色を行い、蛍光観察と組み合わすことで、移植した細胞とホストの細胞(新生細胞)の区別をつけ、細胞の動向を観察するとともにホスト血管との結合を評価する。次に、移植する積層化腹膜シートは培養後、線維素溶解因子であるtPA、uPA、線維化因子であるTGF-β、線維化解除因子であるHGF発現遺伝子等をRT-PCRにて評価し、癒着解除機序の因子を探索する。
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Causes of Carryover |
学会費に充てたが、こちらのミスで学会費に充てることができなかったために次年度使用額が生じた。使用計画は、繰越金はすべて培地などの消耗品に使用する予定である。
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