2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12662
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Research Institution | Utsunomiya University |
Principal Investigator |
佐久間 洋志 宇都宮大学, 工学部, 准教授 (40375522)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 永久磁石 / 有限要素法 / 進化的計算 / 位置制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
永久磁石に砂鉄やクリップなどの磁性体が引き付けられる現象は誰でも知っているが,逆に永久磁石から遠ざかる現象を目にすることは少ない.N極とN極は互いに退け合うが,向きが固定されていなければ容易に反転して,N極とS極が引き付け合ってしまうからである.しかし,複数の永久磁石や電磁石を用いて磁場をうまくコントロールすると,磁性体を磁石から遠ざけることもできる.これまで,磁性体の移動を平面(2次元)に制限することにより,磁性体を任意の方向に移動させる実験が報告されているが,本研究ではこれを3次元に拡張することを目的とする. 磁場の発生には一般的に電磁石が用いられるが,大きな電力を消費する.実は時間的に一定な磁場を作り出すにはエネルギーは必要なく,消費電力のすべてはジュール熱として捨てられる.本研究では,エネルギー消費なしに磁場を発生することができる永久磁石を用いる.特にネオジム磁石は日本で発明された強力な永久磁石であり,この磁石をモータで回転させることにより3次元の磁場を制御する. 初年度においては,3次元磁場シミュレータを導入し,磁石角度が与えられた場合の周辺の磁場の計算と,ある位置に任意の磁場を発生させるための磁石角度を進化的計算により求める手法を確立した.進化的計算は乱数を用いていくつかの解の候補を作り出し,その中から優れた候補を選び出して,さらに子孫を生み出していくという生物の進化を模した経験的手法である.また,ある磁石を回転させた場合に磁性体がどの方向に回転し,どの方向に移動するのかを系統的に調べた. 得られた計算結果は実証実験によりを確認する予定である.初年度はまず,3本のネオジム磁石をモータにより回転させる装置の製作を行った.磁石の位置・角度をモニターしてフィードバック制御を行うためのカメラと画像認識システムも整備した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度においては,3次元磁場シミュレータを導入し,磁石角度が与えられた場合の周辺の磁場の計算と,ある位置に任意の磁場を発生させるための磁石角度を進化的計算により求める手法を確立した.また,ある磁石を回転させた場合に磁性体がどの方向に回転し,どの方向に移動するのか,系統的に調べた.当初は2次元での検討を経て3次元に移行する予定であったが,3次元シミュレーションが順調に進んだため,2次元での検討は省略した. 実証実験により計算結果を確認する予定であるが,今年度はまずは装置の製作を行った.径方向に着磁した3本のネオジム磁石を3角形に配置し,モータにより回転させるものである.開発当初には,小型で高ギア比のものが入手しやすいDCモータを採用した.磁石の角度をモニターするためにエンコーダを用いたが,1°以下の精度で測定することが難しかったため,機種は限られるもののエンコーダが不要となるギアードステッピングモータを採用した.研究の最終段階においては,磁石の位置や角度はあらかじめ計算した通りになることが期待されるが,初期段階においては磁石の位置・角度をモニターしてフィードバック制御を行う.そのためのカメラと画像認識システムを整備した.
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Strategy for Future Research Activity |
磁性体の位置を3次元的に制御するために,どのような磁場を作り出せばよいのか,ひとまず方針が得られた.現在のところ,計算と実験で値に乖離があるため,計算条件の修正を行う必要がある.その後,進化的計算を用いて,磁石角度等の最適化を行う予定である. 実験的には装置が完成したため,今後は実証実験を進めていく.まずは最も簡単な制御と考えられる,磁性体をある位置に留め置くフィードバック制御を行う.それが成功した後,フィードバックを行いながら任意の軌跡を描いて移動させるような制御を行う予定である.最終的には,磁石の位置・角度のモニターとフィードバック制御なしに,計算のみにより任意の軌跡を移動させることを試みる予定である.
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Causes of Carryover |
約3百円の残額が生じたが,次年度予算と合わせて有効に使用する予定である.
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Research Products
(1 results)