2021 Fiscal Year Research-status Report
妊娠マウスの深部体温変動を再現して体外受精卵の発育促進を目指す
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21K12672
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Research Institution | Nihon University |
Principal Investigator |
村山 嘉延 日本大学, 工学部, 准教授 (80339267)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 深部体温 / 発情周期 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題では、受精後早期のマウス深部体温変動の特徴パターンを抽出し、深部体温変動を再現する培養器を開発してマウス受精卵を培養することにより、受精卵の発育に最も適した培養温度変化のパターンを明らかにすることを最終目標としている。令和3年度には、受精後早期(0日から5日)の妊娠マウスの深部体温変動を測定するため、実験条件を定めるための予備実験、および本実験の大半を実施した。超小型温度ロガーを留置した9頭のマウスのうち、全てのマウスにおいて膣垢を採取しながら正常な発情周期を確認すると同時に、1分間隔の高い時間分解能で深部体温を測定して、超小型温度ロガーの留置がマウスの正常な生殖行動を阻害しないことを確認した。9頭のマウスのうち、雄マウスと自然交配して妊娠と胎仔の発育が確認できたのは7頭であった。まず、交配によりマウスが休息する明期の体温が有意に上昇したが、活動量が増加する暗期の平均体温には変化が見られなかった。妊娠した全てのマウスでは交配により明期体温が上昇(交配前36.97℃、交配後37.52℃)したが、非妊娠群では体温上昇はみられなかった。交配前後における明期と暗期の平均体温は、妊娠群では全てのマウスで温度差が減少(交配前0.74℃、交配後0.27℃)したのに対し,非妊娠群では僅かに上昇(交配前0.74℃、交配後0.88℃)した。次に、体内深部温度変動の雑音成分の比較のため、交配前の雑音成分の標準偏差を100%として交配後の変化率を比較したところ、妊娠群では全てのマウスで減少(平均74.3%)していたのに対し、非妊娠群では93.2%に僅かに減少する個体と、123%に上昇する個体が見られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通り進んでいる。当初は令和3年度に本実験に必要な全ての頭数分のデータを取得する予定であったが、超小型温度ロガーの調達(輸入)に想定以上の時間がかかったため8割程度の実験を終了した段階で令和3年度が終了した。しかしながら一方で、当初の計画には含まれていなかった深層学習を用いたデータ解析などの手法を組み込めるようになり、新たな発見に繋がっている。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、令和3年度に実験を終了する予定であった残りの動物実験を終了させる。得られた高時間分解能の深部体温時系列データから、24時間を基本周期とする概日周期成分とその高次周波数成分に分解し、さらに不規則変動成分を示す複雑性成分に分けて特徴パターンを抽出する。次に、見出した深部体温変動の特徴パターンに対して±0.01℃以内に追従できる培養器を開発する。培養器は顕微鏡上に設置して、受精卵のタイムラプス観察を可能とする。さらに、妊娠マウスから採取した受精直後のPN期受精卵を、先に開発した「深部体温変動を模倣する培養環境」に供し、卵割速度、胚盤胞到達度、内部細胞塊細胞数を調べて胚の発育率を調べる。深部体温変動は24時間を基本周期とする概日周期成分、および不規則変動成分(ゆらぎ成分)とに分けて培養器で再現し、それぞれを比較検討することにより、受精卵の発育に最も適した培養温度変化のパターンを明らかにする。
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Causes of Carryover |
超小型温度ロガーの調達(輸入)に時間がかかり、全ての実験を終了できなかった。超小型温度ロガーは4ヶ月程度の使用で電池が切れる消耗品のため、都度調達して実験を行う必要がある。令和4年度には、まず残りの実験に使用する超小型温度ロガーを調達して令和3年度分の実験を終了させる。
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