2021 Fiscal Year Research-status Report
3次元培養系を利用したがん幹細胞性・薬剤耐性に対する抗がん性高分子の高機能化
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21K12684
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
高橋 治子 広島大学, 統合生命科学研究科(理), 助教 (70775767)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 抗がん性高分子 / in vitroがんモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、固形がんの深部に存在しがんの悪性化(転移や再発など)の大きな原因である、幹細胞性・薬剤耐性のがん細胞に対し、高い奏巧性を示す新規抗がん性高分子の開発を目的としている。生体内のHost Defense Peptide(HDP)の物理化学的性質を精密に模倣することで、がんの細胞膜を選択的に破壊する膜活性型合成高分子を設計・合成し、特異的な抗がん活性発現する最適な分子構造の同定、および幹細胞性・薬剤耐性がん細胞を含んだ「in vitro固形がんモデル」を用いた有効性の評価を行う。 1年目である本年度は、HDPを模倣・改良した分子設計により、がん細胞選択的(特異的)に細胞膜を破壊する高機能膜活性型高分子を合成し、その構造の最適化、及び、がんスフェロイドの周囲にがん間質細胞を配したin vitro固形がんモデルの確立を行った。高機能HDP模倣抗がん性高分子の合成・最適化では、様々な側鎖を有する両親媒性ポリマーを合成し、ヒトがん細胞株およびヒト初代正常培養細胞にを用いた抗がん活性・毒性を評価した。ポリマーに付与する側鎖官能基により、がん細胞選択性に影響を与えることを明らかとした。また、がん細胞株から作製したがんスフェロイドと正常線維芽細胞を3次元的に共培養可能なディスク型デバイスを開発し、イメージング技術を組み合わせることで、がん細胞と周辺のがん間質細胞との相互作用をライブ観察可能であることを証明した。本研究成果をBiomaterial Science誌に発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は抗がん性高分子の合成と活性・毒性のスクリーニング、およびin vitroモデルの確立を行った。基本的な高分子構造特性の同定およびin vitroがんモデルの論文発表が達成できたため、進捗状況としては順調に進んでいると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目は、1年目に明らかにした高分子構造とがん細胞選択性の関係をより詳細に検討し、最適な構造を決定する。特に、正常細胞への毒性低減を目指し、非特異的な細胞表面への吸着を抑制できる組成を明らかにする。 また、得られた抗がん性高分子の幹細胞性・薬剤耐性がん細胞に対する効果を評価するため、幹細胞マーカーでのセレクションや薬剤耐性を獲得したがん細胞に対して、抗がん活性を測定する。同時に、がん幹細胞や薬剤耐性がんからスフェロイドを作製し、安定的にin vitroがんモデルに導入できるか検討する予定である。
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Causes of Carryover |
学会がオンライン参加であったため交通費の支出がなかったこと、実験関連物品の購入を計画的に行ったことなどから、7万円弱の残額が出た。本残額は翌年度の実験関連消耗品費(特に毒性評価を行うための正常細胞の追加購入)に使用する予定である。
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