2021 Fiscal Year Research-status Report
Elucidation of polymer structure-biocompatibility relationship using model polymers with controlled side-chain sequences
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21K12687
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小林 慎吾 九州大学, 先導物質化学研究所, 特任准教授 (70625110)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 精密重合 / 定序性高分子 / regio選択的重合 / Grubbs触媒 / 開環メタセシス重合 / 血液適合性材料 / バイオマテリアル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、バイオマテリアルとしての利用が可能な新規生体適合性ポリオレフィンの創製を目的としている。具体的には、申請者が独自に見出した新規血液適合性ポリオレフィンの化学構造を基に高分子を合成し、発現する機能と物性、および高分子構造との相関性を明らかにすることで、機能発現にかかる機序を解明することを目標としている。 2021年度は、側鎖の構造を3-メトキシプロピル基としたポリα-オレフィンの合成を行った。8員環、7員環、5員環の官能基化モノマーを合成し、Regio選択的な開環メタセシス重合を行った結果、側鎖の導入間隔が8炭素、7炭素、5炭素に制御された高分子が得られた。また、2位に側鎖を導入した1,3-ブタジエンのRAFT重合により、4炭素あたり1本の側鎖が導入された高分子を得た。それぞれの高分子に対して水素添加反応を行うことで、主鎖を飽和炭化水素鎖に変換した。2炭素おきに1本の側鎖を導入した高分子は、側鎖末端のヒドロキシ基をTBS基で保護したα-オレフィンをモノマーとし、メタロセン触媒を用いた配位重合、脱保護、メチル化を順に行うことによって合成した。得られた高分子について、各種分光法を用いた化学構造解析と、GPCを用いた分子量評価を行うことにより、目的とする高分子が得られたことを確認した。 得られた高分子をスピンコート法によりポリプロピレン基板にコートし、膜の親水性を評価した結果、側鎖密度が上昇するほど親水的な表面を形成していることが確認された。また、PBS(-)中での膜安定性を評価した結果、ポリ(2-メトキシエチルアクリレート)が脱濡れを起こすのに対し、合成した新規高分子では表面形態の乱れは確認されず、ポリオレフィンに対するコーティング性能が向上していることがわかった。 上記の研究過程で得られた成果については、関連論文2報、学会発表5件として報告した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題の進捗状況に関しては、おおむね順調に進展しているといえる。 研究実績に記載したポリオレフィン系高分子のうち、5炭素おきに側鎖を有する高分子の合成では、置換基の導入位置によって重合の反応転化率が著しく異なり、アリル位に導入した場合に効率的に高分子が得られることが分かった。2炭素おきに側鎖を有する高分子の合成では、末端にメトキシ基を導入したα-オレフィンをモノマーとし、これをメタロセン触媒により重合する合成経路を予定していたが、今年度の検討に用いた触媒系ではエーテル酸素によるものと推察される失活が認められたため、保護、脱保護、高分子修飾反応を経由する経路への変更を行った。種々検討の結果から合成経路を確立し、目的とする構造を有する高分子の合成を達成することができた。 得られた高分子に対して血小板粘着試験による血液適合性の評価を行った結果、側鎖密度の上昇に伴って血小板粘着の抑制が認められ、血液適合性の発現に有効な構造的特徴について知見を得ることができた。 高分子物性と機能の相関性を確認するため、重水を含侵させた高分子の固体NMR測定を行い、高分子中での水の運動性を評価した結果、良好な血液適合性高分子に共通する特徴を見出すことができた。年度の初めにはコロナ禍にかかる移動の制限もあり、他大学の測定機器を借用しての固体NMR測定による評価が年度末までずれ込んだものの、測定の大部分を完了することができた。 全体を通じて、年初に予定していた合成とその物性評価、ならびに生体適合性の評価をほぼ終了させることができており、この点において2021年度の本研究の進捗状況は、おおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
合成を達成した高分子のうち、2炭素おきに側鎖を有する高分子の合成では、保護、脱保護、高分子修飾を経由する多段階の合成経路をたどっており、目的とする高分子の収量と収率がともに低いのが現状である。そこで2022年度以降は、側鎖末端に極性官能基を有するモノマーの重合が可能な触媒系の探索を行い、より簡便に目的の高分子を合成する経路の確立を目指しつつ、構造-機能相関の解明にかかる検討を進めていく。 本研究と関連するこれまでの研究の過程で、合成高分子が発現する生体適合性、とりわけ血液適合性に関しては、含水高分子のDSC測定において観察される、低温結晶形成する水の分画が多い高分子であるほど血液適合性が高いことが分かっている。本研究で合成したポリオレフィン系高分子でも、おおむね同様の傾向があることが確認できつつあり、2022年度以降もDSC法や固体NMR法を用いた水和状態の評価を継続する。ここで得られた知見と新規高分子には特許性が認められたため、2022年度上期中に特許出願を完了したうえで、以降の成果を投稿論文として公開していく予定である。 2021年度の検討結果を受け、側鎖の導入間隔を広げた場合でも低温結晶形成する水の分画を増加させ得る化学構造を見出すことができたため、2022年度以降に新規合成する高分子のデザインへとこの知見を反映し、さらに高い血液適合性と膜安定性を発現する高分子の創出を目指していく。 研究期間を通じて、得られた高分子の化学構造と発現する水和状態、および血液適合性の相関性について検討を進め、高分子が発現する血液適合性の精密制御と、その機能発現機構の解明につなげていく予定である。
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Research Products
(7 results)