2022 Fiscal Year Research-status Report
核酸医薬密生型キャリアフリーDDSを活用したナノ粒子点眼薬の開発
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21K12690
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
秋山 好嗣 東京理科大学, 教養教育研究院葛飾キャンパス教養部, 准教授 (40640842)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊池 明彦 東京理科大学, 先進工学部マテリアル創成工学科, 教授 (40266820)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | キャリアフリーDDS / DNA密生層 / 自己崩壊性高分子 / コンビネーション治療 / ナノ粒子点眼薬 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究課題は、低分子治療薬オリゴマーを内核とした核酸医薬密生型キャリアフリーDDS製剤を眼科製剤に応用できる基盤技術の確立を目的としている。そのため、特定の環境下で核酸医薬をリリースする戦略が構造設計で求められる。今年度は、内核を自己崩壊性高分子とし、かつ細胞内還元環境下で自己崩壊を誘起できるナノ構造体の新規作製を含め、以下の2課題(aとb)を実施した。これら研究課題は学会および論文にて成果報告をおこなった。 (a)還元環境で自己崩壊を誘起するDNA密生型ナノ構造体の精密設計: ジスルフィド誘導体を末端に有する自己崩壊性ポリ(カルバメート)-DNA(SS-PC-DNA)コンジュゲートを新規に設計し、その合成を試みた。得られたコンジュゲートを透析法により自己組織化させた。動的光散乱測定により粒径約100 nmの単分散なナノ構造体を得ることに成功した。 (b)簡易分析向けDNA-金ナノ粒子コンジュゲートの作製: 二重鎖(ds)DNA固定化金ナノ粒子(dsDNA-AuNP)を用いて酵素活性と低分子医薬の薬物活性を目視検出できる簡易分析法の開発を推進した。前者においては、昨年度に合成したガラクトース(β-Gal)型末端修飾剤を粒子の表層部に導入することに成功した。後者では、これまでにdsDNA-AuNPの最表層部に抗がん剤(ここではブレオマイシン(BLM))が切断する配列を組み込むことで、その切断活性の目視検出を可能にした。今年度は再現性の確認を兼ねて、切断配列をもたない粒子との比較実験を実施し、ナノ粒子の色変化がBLMの配列特異的な切断に基づいたものであることを実証した。また、金ナノ粒子を消光剤とした1分子鎖の分子ビーコン-金ナノ粒子コンジュゲートを作製し、腫瘍マーカーの蛍光検出に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ナノ粒子点眼薬は、自己崩壊性高分子と核酸とのコンジュゲートが自己組織化することで形成される。安全かつ高効率なナノDDS眼科製剤とするためには、水溶液中での高い分散性に加えて、刺激に応答した自己崩壊性が求められる。今年度は、末端にジスルフィド誘導体を有するSS-PC-DNAを作製し、ナノ粒子化できる方法論を確立した。また、ジチオトレイトールを含む水溶液を用いた還元環境下における自己崩壊の実証に向けた条件の最適化に着手した。さらに、dsDNA-AuNPの表層部に糖を固定化すると強イオン強度下においても安定に分散できることを実証した。これは、粒子表層部に存在している糖の突出構造がコロイド分散性に大きく影響することを示唆している。そこで、新たに鎖長の異なるアルキルアミン(C3、C6、C12)の突出構造を二重鎖DNA修飾金ナノ粒子の最表層部に導入する実験についても検討を開始した。興味深いことに、このナノ粒子分散系に塩を添加すると、C3またはC12の突出構造を有するナノ粒子の場合は、凝集に伴う色変化が観察された。一方で、C6の突出構造はナノ粒子の凝集を強く抑制した。炭素鎖の僅かな違いが二重鎖DNA修飾金ナノ粒子のコロイド分散性に大きな影響を与えることを見出した。 以上より、還元環境下で自己崩壊を誘起できるDNA密生型ナノ構造体の作製、内核を金ナノ粒子としたバイオ分析手法の構築、さらにはアルキルアミン突出構造をもつdsDNA-AuNPのコロイド分散制御は、ナノ粒子点眼薬として利用する初の試みにおいて重要な知見を与えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
1. 核酸医薬密生型キャリアフリー眼科製剤の構造設計:内核をPC誘導体としたDNA密生型ナノ構造体の還元環境下における自己崩壊特性を動的光散乱測定とHPLCにより評価する。次に、網膜芽細胞腫(Y79)を用いたナノ構造体の毒性試験(乳酸脱水素酵素)および取込み効率評価(FACS)を実施する。また、外殻を核酸医薬としたナノ構造体に低分子医薬を内包することで、細胞内還元環境下における異種薬物の同時リリースの実証を試みる。 2. 酵素活性の目視分析法の開発:β-Gal誘導体を搭載したdsDNA-AuNPを用いて、酵素活性の簡易比色分析法を開発する。
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