2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K12694
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Research Institution | Hokuriku University |
Principal Investigator |
高橋 達雄 北陸大学, 薬学部, 教授 (50445904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 宏一 北陸大学, 薬学部, 准教授 (70257484)
佐藤 友紀 北陸大学, 薬学部, 講師 (30367495)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 変形性関節症 / リクイリチゲニン / エストロゲン受容体 / 軟骨細胞 / 軟骨基質 |
Outline of Annual Research Achievements |
変形性関節症(OA)は高齢者に好発する慢性の関節疾患であり、痛みに加えて関節機能の低下ももたらすためQOL低下の大きな要因となっている。本研究の目的は、関節軟骨の修復作用を有する疾患修飾性OA治療薬を創製し、軟骨細胞培養系およびOAモデルマウスを用いてその有効性を立証することである。 フラバノン誘導体の1つであるリクイリチゲニンは、軟骨前駆細胞(ATDC5細胞)に作用して軟骨基質の構成成分であるグリコサミノグリカンとアグリカンの産生を濃度依存的に増加させた。リクイリチゲニンはATDC5細胞の増殖能を促進したが、軟骨細胞マーカーの遺伝子発現に影響しなかった。また、レポーターアッセイの結果から、リクイリチゲニンはエストロゲン受容体のアゴニスト活性を有していることが確認された。エストロゲン受容体のアンタゴニストFulvestrantとリクイリチゲニンを併用することによって、リクイリチゲニンの細胞増殖促進作用とグリコサミノグリカン産生増加作用が阻害されたことから、リクイリチゲニンはエストロゲン受容体を介してATDC5細胞の細胞増殖を促進し、軟骨基質の産生を増加させることが明らかとなった。 複数のフラバノン誘導体を用いてエストロゲン受容体の活性化を検証した結果、フラバノン誘導体A環の7位水酸基がエストロゲン受容体の活性化に重要であり、軟骨基質産生増加作用には、フラバノンA環の7位水酸基とB環3´位もしくは4´位水酸基が重要であった。フラバノン誘導体による軟骨基質の産生増加作用発現には、エストロゲン受容体を活性化するだけでは不十分であり、B環の水酸基の位置も重要であった。実際に、内因性のエストロゲン受容体アゴニストであるエストラジオールは軟骨基質産生増加作用を認めなかったことから、この作用は特定のフラバノン誘導体に認められる特有のものであった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、フラバノン誘導体リクイリチゲニンによる軟骨基質産生増加作用の発現機序を明らかにすることができた。また、複数のフラバノン誘導体の化学合成にも成功しており、フラバノン誘導体のA環とB環の水酸基の数と位置に関する構造活性相関を検証することができた。これらの結果は、今後の推進方策に十分生かすことができると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究実績により、リクイリチゲニンの軟骨基質産生増加作用はエストロゲン受容体の活性化を介して発現していることが明らかとなっている。ドッキング解析により、リクイリチゲニンの7位の水酸基を6位に移動することでエストロゲン受容体に対する親和性を増大させる可能性が示唆された。このことから、リクイリチゲニン(4’,7-dihydroxyflavanone)と4’,6-dihydroxyflavanoneの軟骨基質産生増加作用を軟骨前駆細胞(ATDC5細胞)を用いて比較し、高活性のものを疾患修飾性変形性関節症(OA)治療薬の候補化合物とする。 候補化合物のOA治療効果を検証するために、疾患モデルである関節不安定マウスを作製し、候補化合物を経口投与する。OAの病勢は関節の病理切片を作製し、軟骨の破壊の程度、Ⅱ型コラーゲン、Ⅹ型コラーゲン、MMPの発現を免疫組織染色によって定量的に解析する。 候補化合物のOA治療効果をより高めるために、候補化合物の骨への送達量を増加させる。骨輸送担体として機能する酸性オリゴペプチド(アスパラギン酸ヘキサペプチド)を自動マイクロ波ペプチド合成装置によって合成し、候補化合物に付加する。酸性オリゴペプチドを付加した候補化合物のOA治療効果を上記の方法で同様に検証し、疾患修飾性OA治療薬の創製を目指す。
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Causes of Carryover |
フラバノン誘導体を基盤とし、軟骨基質の産生増加作用を有する高活性化合物を創出するにあたり、多数のフラバノン誘導体の化学合成を計画していた。しかし、軟骨基質産生増加作用を有するフラバノン誘導体は非常に限定的であり、当初の計画よりも少ない数の化合物のみで構造活性相関を得ることができたため、次年度使用額が生じた。 今後、疾患修飾性変形性関節症治療薬の創出にあたり、化学合成によってフラバノン誘導体に酸性オリゴペプチドを付加する必要がある。現在行っている予試験の結果から、酸性オリゴペプチド付加体の収率が低いため、当該助成金を利用して必要量の酸性オリゴペプチド付加体の合成を行う。
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