2021 Fiscal Year Research-status Report
生体内拡散光を用いた無侵襲血管性状イメージングシステムの構築
Project/Area Number |
21K12734
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
北間 正崇 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (50285516)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清水 孝一 北海道大学, 情報科学研究院, 名誉教授 (30125322)
加藤 祐次 北海道大学, 情報科学研究院, 助教 (50261582)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 光透視 / 光散乱 / シャントトラブル / 内シャント / 石灰化 / 血管透視 / 透析 / 医用画像 |
Outline of Annual Research Achievements |
人工透析患者が体外循環を行う際,前腕部等に造設する内シャントは頻回の穿刺や乱流のストレスにより狭窄や閉塞などの血管異常が頻発する.血管異常の要因は様々であり,血管性状の観察は早期診断・治療する上で重要である.本研究では我々がこれまでに検討してきた非侵襲内シャント光イメージング手法を推し進めることで,透析患者の狭窄原因として症例の多い血管壁の石灰化や脂質沈着を経皮的にイメージングする手法の確立を目指す.本年度は血管の石灰化部位の描出に焦点を絞り,生体模擬試料を用いた定量的評価を目指して以下の実験的検証を行った. 1.石灰化病変部の光イメージングを実現する上で,その主成分と考えられるリン酸カルシウムの描出可能性について検討した.生体組織を模擬したスラブ状ファントムの一部に濃度の異なるリン酸カルシウムを加えることで石灰化の進行過程を模擬した.リン酸カルシウムは吸光スペクトルのピークを複数有するが,中でも生体に多く含まれる水の吸収が他のピーク波長に比べて少ない1,200 nmのLEDを光源として用いた.計測の結果,濃度4.0 (v/v)%以上であれば吸光変化の描出は可能であることが示唆された. 2.前述の検討結果に基づき,2次元分布計測の実現を目的に新たな計測システムを構築した.前腕部を対象とした場合,その厚みから透過光による計測は難しいため,我々が提案している拡散光検出手法を用いる.光源として血管走行に沿った線状の照射が可能なLine LD,2次元検出器には,波長400~1,700 nmに感度を有するSWIR (Short wavelength infrared) カメラを用いて,模擬石灰化病変の描出を目指した.その結果,血管透視像中に高い吸光度で石灰化病変部を描出できたが,正常血管壁や血液部のコントラストが低いことも明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実施計画に従い,生体内拡散光を利用した血管性状イメージングを目指して研究を進めている.血管性状イメージングでは性状変化部位の特徴を光学的に捉え得ることが重要であり,先行研究で構築してきた内シャント光イメージングシステムでは光源波長およびカメラの検出感度の問題で実現できていなかった.これに対して本年度の研究では,石灰化部位の主成分とされるリン酸カルシウムの吸光スペクトルから最適な光源波長の選択とその波長域に感度を有するカメラを導入し新たな計測システムを構築できた.また,病変部を模擬したファントムの計測から,血管の石灰化狭窄イメージングの実現可能性が実証された.現在までは当初の計画に沿って概ね順調に進展しており今後も予定どおりに研究を遂行できるものと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
上記のとおり,初年度の研究は計画に沿って順調に進展している.基礎的計測が可能なシステムを構築できたことから,今後は以下の項目を実施することで,研究計画で示した技術開発に向けて本研究課題を推進する. ・現有の多波長イメージングシステムに波長1,200nmの計測系を組み込み,血管形状と性状の同時計測を行う. ・光源波長毎に吸光・散乱特性が異なることを考慮し,狭窄形成の主要因とされる脂質や石灰化病変部の分光・伝播特性から最適処理条件を設定する. ・病変部描出のアルゴリズムに機械学習を導入し,精度の向上を図る. ・臨床利用を考慮したシステムの最適化を図る. ・内シャント透視像を診断データとして活用できるよう,波長別解析結果を適切に管理するための手法を検討する.
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Causes of Carryover |
本年度に予定していた新たな光源とカメラを組み込んだ計測系の構築において,基本的な計測システムは実現できた.一方で導入したカメラの仕様が計画時から変更になったこと,コロナ禍で病院勤務者の研究協力が困難であったこと,調査・研究旅費を使用していないことにより次年度使用額が生じた.今後,新型コロナの状況を見据えながら医療機関との連携を行うと共に,当初の研究計画の中で先行可能な内容を調整し,繰り越した予算を利用することで全研究期間における計画を遂行する予定である.
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