2022 Fiscal Year Research-status Report
Non-contact inhibitory method for biofilm and infection using electro-magnetic field.
Project/Area Number |
21K12739
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Research Institution | Suzuka University of Medical Science |
Principal Investigator |
三浦 英和 鈴鹿医療科学大学, 医用工学部, 准教授 (50451894)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼松 秀行 鈴鹿工業高等専門学校, 材料工学科, 特命教授 (10185952)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | バイオフィルム / 交流電磁界 / インピーダンス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では交流電磁界がバイオフィルムとその形成に及ぼす影響について明らかにすることが抑制メカニズムの解明につながると考え、バイオイルムの電磁気的挙動を計測することした。電界、電流による作用と磁界による作用があるが前者について広い周波数範囲(100Hzから100kHz)におけるインピーダンスの経時変化を計測した。表皮ブドウ球菌を標準的な方法で培養し底面に櫛型電極をとりつけたシャーレ内で静置培養を行いながら、経時的にインピーダンス変化をインピーダンスアナライザーにて測定した。菌液は1.7×10^9個/mLまで培養し培養液で3倍希釈、10倍希釈および培養液のみとした。計測開始から培養液のみの場合はインピーダンスの低下が見られ、菌液では上昇した。その後一様にインピーダンスは増加し一定の値になったが3倍希釈、10倍希釈ともに菌液ではある時間で最大値を取り顕著なインピーダンスの変動が見られた。計測開始から細菌は沈殿、増殖しインピーダンスが上昇、その後細菌死によりインピーダンスが減少した後、バイオフィルムの形成によりインピーダンスは再び上昇し36から40時間で極大を迎えたと考えられる。このようにバイオフィルム形成系のインピーダンス変化の原因は細菌の挙動が複雑に絡み合っていると考えられ、この結果はバイオフィルム形成のセンシングや抑制方法についても新たな知見を与えるものであると考えられる。ラボラトリーバイオフィルムリアクターについても開発を行った。バイオフィルム形成においては流れにある状態におけるバイオフィルム形成については材料表面におけるせん断応力の影響が指摘されており流れがある状態でもインピーダンス計測を適用できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で限られた時間と行動制限の中で研究を迅速に遂行するためインピーダンス計測の自動化とバイオフィルム形成状況の撮影の自動化を行ったが進捗の遅れに対する完全な解決策にはなり得ていない。特に多種の菌種について電磁界による抑制効果における周波数、磁界の強さの依存性の網羅的な実験を遂行することは難しいと感じられた。したがってインピーダンス計測等による電磁界による挙動の変化や経時観測によるアプローチによりメカニズム解明を指向した研究手法が有効であると考えた。 本邦でも新型コロナ禍の影響からようやく脱しようとしているが大学入学時よりコロナ禍に見舞われた学生が最終学年を迎える状況にあり、この間遠隔授業を中心に過ごした学生については特に実習系科目に関して到達度の遅延、認知力の低下が認められ各教員は補講やリメディアル教育などの対応に追われている。同時に自ら考え手を動かして実施する研究教育は究極のアクティブラーニングラーニングといえる。そのため学生を研究に参加させることで研究の進展と教育の両立を図ることが重要であると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
抑制効果における周波数、磁界の強さの依存性の網羅的な実験を遂行することは難しいため、菌種を表皮ブドウ球菌もしくは環境常在菌に絞る。表皮ブドウ球菌はバイオフィルム形成が安定しており、評価系も確立している。他の細菌では材料の違い等からバイオフィルム形成条件を見直す必要がある場合があるため、扱いやすい表皮ブドウ球菌に対して集中して実験、計測を行う。 表皮ブドウ球菌を静置培養した際のインピーダンス変化が顕著なものであったためセンシングへの応用の可能性と形成抑制へ電界による影響が大きいことが示唆された。そのため、コイル状の電極を配管内部などに設置し、外部コイルから交流電磁界により内部コイルに誘導起電力を生じさせ、内外のコイルの磁気的なカップリングによりバイオフィルムの形成をセンシングする方法、交流電界と電流によりバイオフィルム形成を抑制する方法を試みる。外部コイル及び駆動装置はこれまでに使用したものそのまま流用でき、内部コイルはインピーダンス計測に用いた櫛形電極と同様にフォトリソグラフィとエッチングにより作成する。また、直接電極により交流電界を印加し場合と交流磁界、電磁誘導を用いた場合の抑制効果の差異を検証する。 静置培養した場合と流れにある状態におけるバイオフィルム形成に伴うインピーダンス変化の計測をラボラトリバイオフィルムリアクタを用いて行い、センシングが可能か、経時変化にどのような特徴の差があるかを検討する。ラボラトリバイオフィルムリアクタでは同一の流路の中で対照群との比較を明確に行うことが出来るため、静置培養で抑制効果が認めた条件について比較実験を行う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍に伴う行動制限により研究活動が停滞し消耗品費、特に出張費が大幅に支出できなくなったことが予算の使用状況が少ない理由である。研究実施計画と期間を見直し、研究期間を延長してまとまった成果を出せるように努める。本年には予算を研究に必要な機材、消耗品に使用し、研究体制の充実に努める。本年度後半から来年度にかけては成果発表に係る費用に充てる予定である。
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Research Products
(6 results)