2021 Fiscal Year Research-status Report
寛骨臼形成不全に対する人工関節シェルの固定評価法の開発と手術法に関する指針の策定
Project/Area Number |
21K12755
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
吉田 和弘 北里大学, 医療衛生学部, 講師 (10791379)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 人工股関節 / 初期固定 / 寛骨臼シェル / 寛骨臼形成不全 |
Outline of Annual Research Achievements |
世界的な高齢化社会において人工関節の需要は急速に増加しているが,寛骨臼側シェルと骨の間でゆるみが生じることで再置換手術を余儀なくされることが多数存在する.人工股関節を体内に固定する方法は,骨セメントを使わずに直接骨と人工関節を固定するセメントレス固定が主流である.しかし,シェルの初期固定力評価方法は,国内外において公な規格は存在しない.そのため,シェルとポリエチレンライナーの嵌合力を評価するASTM F1820と類似の試験方法として,回旋試験やレバーアウト試験を行った報告が非常に多い.しかし,これらの試験は体重による垂直荷重など実際は複数方向に同時に作用している生体内の負荷を十分にシミュレートできているとは言えず,より生体力学環境を再現できる試験系が必要であると考えた. そこで当該年度は,生理的負荷環境を再現した初期固定力評価方法を新規開発することを目的とした. シェルへの歩行荷重および屈曲方向の負荷は,シェルの器具取付部を利用して非破壊的に付与できる設計とした.シェル設置角度が標準的な外方開角40°, 前方開角20°となるようにシェル固定治具を設計し,その治具を介してシェルへ屈曲方向の回転運動を付与できる構造とした.また,歩行荷重はエアシリンダによりシェルへ加える構造とした.エアシリンダへの供給圧はLabVIEWにより信号制御された電空比例弁により調整し,実荷重はロードセルでモニタリングできる設計とした.歩行荷重は,踵接地から爪先離地までの立脚期が最も高いとされている.このことからエアシリンダによって加える歩行荷重は,人工股関節の摩耗試験規格より3 kNとした. 基本的な機構系設計,制御系設計はおおむね順調に進展しているが,歩行荷重3 kN負荷した状態での試験ではシェル固定治具と装置側の連結部で強度不足が確認され,一部設計変更が必要となった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今回設計したシェル固定治具と装置側の連結部で強度不足が確認され,歩行荷重3 kN負荷した状態での試験ではシェルと模擬骨の固定が破綻する前に治具の破損が生じた.そのため,一部設計変更が必要となっている.しかし,歩行荷重を立脚期である3 kNから遊脚期の0.3 kNと負荷を下げた状態では試験は遂行可能であることが確認できた.このことから強度不足の部分以外の各種設計に関してはおおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
今後については,まず装置の強度不足が確認された部分の高強度化を図る.具体的には試験中に生じたトルクに負けた回旋止め部分の厚みや材質を変更することで高強度化を図る.試験装置の設計完了後,基準となる理想的な固定状態における初期固定力を測定するため,寛骨臼形成不全のような骨の欠損は無い模擬骨を用いて初期固定力を評価する.模擬骨を手術器具でリーミングし,シェルを模擬骨内に嵌合させる.リーミング条件は,臨床で一般的な1 mmアンダーリーミングにて実験を行う予定である.
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Causes of Carryover |
オンラインで学会発表が開催され,計上していた旅費の支出がなかったため次年度使用額が生じた.設計変更する部品の物品調達費にあてる予定である.
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