2022 Fiscal Year Research-status Report
Development of equipment that enables quick evacuation to the upper floors of facilities for the elderly in the event of a tsunami or flood
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21K12810
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
宮坂 智哉 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (10404758)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 階上への避難 / 避難器具 / 津波・水害 |
Outline of Annual Research Achievements |
介助者2名により自力避難困難者1名が階上に避難する避難器具を開発し、その避難方法と避難時間を提示することを課題とする。避難器具モデルは人力で引き上げ、直接乗車も車いすに乗った状態で乗車も可能な仕様を検討している。避難行程を想定した実験系を設定し、モデルにダミーを乗せて階上への避難を試技とした実験を実施し、さらに安全性を確保した上で人を乗せた実験を実施する。実験結果、考察から階上への避難方法と避難時間を提示し、目標の達成度を判断する。 高齢者施設の自力避難が困難な入所者と介助者を対象とし、津波、水害などで施設の階上に避難を余儀なくされた場合を想定し、限られた条件で自力避難が困難な入所者が介助を伴い建物内の上の階に避難する器具を開発し、その避難方法を検討する。施設の夜間勤務帯での津波、水害発生を想定し、介助者2名の人力により、自力避難が困難な入所者1名が階段から1つ上の階に1分以内で避難することを目標とする。 令和3年度は、避難器具モデル仕様を検討し、設計製作を委託する。予備実験を実施し、モデルによる実験条件に必要な知見を得る。予備実験は階段にスロープを設置し、標準型車椅子にダミー(重量50kg)を乗せ、介助者2名で引き上げる。対照として従来の避難用ストレッチャーによる引き上げ動作の実験を実施する。令和4年度は製作したモデルの性能を確認する。ダミーをモデルに乗せ、基本的な操作、移動を安全に実施可能か確認し、人力による避難の限界を確認する。また、人力では困難な場合に動力を用いた避難器具モデルの検討をする。令和5年度は、人力による避難器具モデルの特性、効果を評価する。また、電動による避難器具モデルについて、実験実施に必要な仕様を検討し、設計の依頼をする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度に設計製作を委託した避難器具モデルが完成した。製作した避難器具モデルの性能を確認した。50kgダミーを避難器具モデルに乗せ、基本的な操作、移動を安全に実施できるかを確認した。次に大学内にある階段(10段、斜度33°、斜面距離2.8m)で、50kgダミーを乗せた避難器具モデルを被験者2名で引き上げる実験を実施し、被験者の体力と引き上げ時間の関係を検討した。被験者の体力を握力とみなし、体力の大きいペアから小さいペア5組を設定し、階段斜面の引き上げ時間を測定した。被験者2名の握力の合計値(kgw)と、その被験者2名による引き上げ時間(s)は、被験者ペア1(105kg,6.1s)、被験者ペア2(84kgw,8.7s)、被験者ペア3(75kgw,8.1s)、被験者ペア4(60.5kg,48.4s)、被験者ペア5(45.5kgw,68.0s)で、被験者ペアの握力の合計値が60kgwを下回ると引き上げ時間が長くなった。このことから、高齢者施設での避難を想定した場合、介助者2名のうち、2名ともに体力が弱い(例えば女性介助者が2名)と試作した避難器具モデルでは実用的な避難は困難なことがわかった。以上のことから、一定以上の体力がある介助者の組み合わせ(例えば2名のうち、1名が男性など)では本研究のような人力による避難器具モデルでの避難を検討し、介助者2名ともに体力が弱い組み合わせでは電動など動力を用いた避難器具モデルによる避難を検討するのが良いことがわかった。そこで電動による避難器具モデルを入手し、特に体力が弱い介助者への適用についても検討を始めることにした。 以上のことから、試作した避難器具モデルの基礎的な評価を実施し、人力による避難方法の限界について、見通しを立てることができたので、本研究は概ね順調に進展しているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
<令和5年度> 試作した人力による避難器具モデルについて、50kgダミーを避難者とし、合計の握力値が60kg以上の介助者2名で、避難器具モデルへの移乗、階段-踊り場-階段を経由した上階フロアへの避難行程の時間、負荷量を測定する実験を実施し、人力による避難器具モデルの特性、効果を評価する。また、電動による避難器具モデルについて、実験実施に必要な改造や仕様変更等を検討し、設計を依頼する。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、計画時の予算設定と比較して、実際に執行したのは主に電動避難器具モデルの基本的評価を行うために、その評価用モデルの購入で済んだためである。引き続き本研究の実験実施や、さらに研究を進行するための内容について、予算を執行していく。
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