2021 Fiscal Year Research-status Report
Rethinking the Concept of Responsibility: From the Kyoto School's Theory of Time
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21K12823
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
犬塚 悠 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (80803626)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 責任 / 時間 / 西田幾多郎 / 和辻哲郎 / 三木清 / 尊厳 / 自然 / 技術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は責任概念とその適用範囲を再考することを目的とし、西田幾多郎ら京都学派の哲学、特に時間論をその手がかりとするものである。本年度は研究代表者が2021年9月27日から2022年3月末まで産前産後の休暇と育児休業を取得したため研究期間が限られていたが、2つの口頭発表と1つの書評の発表を行った。 口頭発表の一つ目は「世界哲学における尊厳概念」をめぐるシンポジウムにおけるものである。「尊厳」は責任主体を考える上でも重要な概念である。シンポジウムでは近年国際的に実施されている尊厳概念研究プロジェクトの代表者による発表2つを受け、非人間中心主義的な尊厳概念の可能性や、多元的な尊厳概念がある中で包括的な尊厳概念を追求する意義などについてコメント・課題提示を行った。 口頭発表の二つ目は、European Association for Japanese Studiesの第16回国際大会で開催されたパネルThe Human Environment between Nature and Technique: A Promenade in Twentieth Century Japanese Philosophyにおけるものである。近代日本の和辻哲郎・西田幾多郎・三木清らの哲学における自然・技術の位置づけの比較を行った。特に、西田や三木の創造論に見られる「事後性」について言及し、その場合に考えられる「責任」の在り方について問題提起した。 書評は和辻哲郎の業績をめぐって2021年3月に出版されたアンソロジーについてのものである。多分野の研究者によって執筆された当該書籍を通して、本研究課題に関係する和辻倫理学も複合的な視座において評価する必要性があること、また経済的・政治的危機の時代における人文学者としての和辻の現代的意義が確かめられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が9月末から3月末まで産前産後の休暇と育児休業を取得したため、研究の進捗にやや遅れが出ている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策は次のとおりである。 1.1.京都学派における無と超時間性:西田らの文献に見られる「無」と時間との関係を明らかにする。特に、無が自然法則の有の世界を包む「於てある場所」として超時間性をもつことに着目する。1.2.無の哲学における超時間性と自己言及性:西田らの哲学において独立した個人的主体は否定されるが、彼ら自身が無について考えることができている根拠は何か。無との関係における個人の位置づけを探る。 2.1.京都学派の芸術・創造論における事後性:芸術家は単に完成図を物に反映するのではなく、試行錯誤を通して作品さらに芸術家自身が形成されると指摘する西田の議論を中心として、「自覚」の事後性を明らかにする。2.2.京都学派教育学の芸術・創造論における事後性:西田哲学の影響を受けた木村素衛の教育論を手がかりに、創造行為の後に自分が何者かを知る人間の「自己形成」の事後性を考察する。 3.1.京都学派における個と社会:西田らは1930年代以降、個と社会・人類との二重ないし三重構造に着目した。個人的・社会的な人間の時間の重層性、責任について自覚の事後性との関係を含め明らかにする。3.2.京都学派における罪悪論と責任:人間の有限性の認識が根底に見られる西田らの「根源悪」の議論と、前述の無の超時間性、創造行為における事後性、個と社会の時間の重層性の議論を踏まえ、責任の在処を考察する。 当初、1.1と1.2は2021年度から2022年度中期頃に、2.1から2.2は2022年度中期から2023年度中期に、3.1から3.2は2023年度中期から2024年度にかけて行う予定であったが、産前産後の休暇と育児休業に伴う研究中断期間が生じたことから、それぞれ半年から1年程期間を延長する。一研究課題に時間を要した場合は、適宜計画を見直しながら研究を進める。
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Causes of Carryover |
2021年9月27日から2022年3月末まで産前産後の休暇また育児休業を取得することに伴う研究中断期間が生じたため。翌年度分として請求した助成金と合わせた約119万円は、図書などの物品費として約90万、英文校正費などのその他経費として約29万円使用する予定である。
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Research Products
(3 results)