2022 Fiscal Year Research-status Report
古典外延的メレオロジーの可能性と限界に関する論理学的・形而上学的探究
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21K12827
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
北村 直彰 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (60771897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メレオロジー / 論理学 / 形而上学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2022年度は、本研究の形而上学的側面の一つとして、古典外延的メレオロジーを特徴づけるテーゼの一つである外延性の原理(「同一の対象群を部分として構成される全体はたかだか一つしか存在しない」という主張)に対してこれまでなされてきた動機づけと、この原理に対する反例として提示されてきた事例をそれぞれ批判的に検討する作業を進め、本研究の目的を達成するための一つの基盤となる成果が得られた。具体的には、次の二つの点が明らかになった。(1) 外延性の原理を動機づけてきた唯名論的な発想の理解に関して、N. Goodman (1956) によるアプローチは、古典外延的メレオロジーがその真偽に関して中立的であるべき主張(「どんな対象も真部分をもたない対象から構成されている」と主張する原子論)を前提しているという欠点を抱えているが、K. Fine (2010) によるアプローチは、古典外延的メレオロジーが区別しない「構造」を明確に特徴づけることによってそうした欠点を抱えないものになっている。(2) しばしば外延性の原理の反例として考えられてきた「物質的一致」の事例は、ある時空領域を占める対象の数に関する実質的な存在論的問題ではあるが、それ自体としては、外延性の原理に対する脅威とはならない(反例を生み出すように見える捉え方も実際のところ外延性の原理と両立する)。以上の成果は、古典外延的メレオロジーを話題領域によらず適用可能な唯一の体系として受けいれるべきか否かを検討するという課題に取り組むうえで一定の重要性をもつと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標としていた論文の完成には至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度は、2021年度・2022年度における本研究の成果をそれぞれ論文の形にまとめたうえで、古典外延的メレオロジーを公理化する複数の方法、および、それらにおける相異なる「メレオロジー的和」の概念が相互にどのような関係にあるかを明確にする作業(本研究の論理学的側面の一つ)を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の研究を遂行するために必要となる物品費(図書購入費)が当初の想定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。当該金額は、次年度の図書購入費、学会出張旅費、および英文校閲費として使用することを計画している。
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