2023 Fiscal Year Research-status Report
古典外延的メレオロジーの可能性と限界に関する論理学的・形而上学的探究
Project/Area Number |
21K12827
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
北村 直彰 島根大学, 学術研究院人文社会科学系, 講師 (60771897)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | メレオロジー / 論理学 / 形而上学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は、本研究の形而上学的側面の一つとして、古典外延的メレオロジーを特徴づけるテーゼの一つである無制限構成の原理(「いかなる存在者の集まりに対しても、それらから構成される全体が存在する」という主張)に焦点をあて、この原理に対する反例として提示されてきた種々の事例と、この原理の正しさを示そうとする代表的な議論である〈曖昧性に基づく論証〉をそれぞれ批判的に検討する作業を進め、本研究の目的を達成するための一つの基盤となる成果が得られた。具体的には、次の点が明らかになった。(1)〈曖昧性に基づく論証〉に対してこれまで提示されてきた批判はいずれも十分な効力をもつとは言いがたいが、その一方で、曖昧性を含まない仕方で無制限構成の原理を制限することを示唆する事例に対して〈曖昧性に基づく論証〉を間接的にあてはめようとする戦略が抱える難点をふまえれば、特定の存在論的カテゴリーに関してのみ成り立つテーゼとして無制限構成の原理を捉えることが十分に動機づけられる。(2) いかなる存在論的カテゴリーにも限定されない仕方で無制限構成の原理が成り立つことを受けいれつつ、この原理に対する反例として提示されてきた事例を支える直観を維持するために、存在量化子によって表現される「存在」の概念と、形而上学的により実質的な内容をもつ「存在」の概念とを区別するようなメタ存在論的立場に訴えるという方策が一定の有効性をもつが、当の反例として機能しうる事例の多様性をふまえれば、形而上学的に実質的な意味での「存在者」に特定の共通性があることを前提にしない枠組み(特に、「基礎づけ(grounding)」の概念に基づくメタ存在論的立場)を採用することが望ましい。以上の成果は、古典外延的メレオロジーを話題領域によらず適用可能な唯一の体系として受けいれるべきか否かを検討するという課題に取り組むうえで一定の重要性をもつと言える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
目標としていた論文の完成には至らなかったため。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、前年度までの本研究の成果を論文の形にまとめたうえで、古典外延的メレオロジーを公理化する複数の方法、および、それらにおける相異なる「メレオロジー的和」の概念が相互にどのような関係にあるかを明確にする作業(本研究の論理学的側面の一つ)を進める。
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Causes of Carryover |
本年度の研究を遂行するために必要となる物品費(図書購入費)が当初の想定よりも少なかったため、次年度使用額が生じた。当該金額は、次年度の図書購入費の一部として使用することを計画している。
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