2021 Fiscal Year Research-status Report
Study on the concept of madness in Plato's thought
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21K12832
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
三浦 太一 中部大学, 人文学部, 講師 (60847531)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 狂気 / プラトン / ギリシア哲学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、人間精神において重大な意味を持つ狂気の概念を解明するため、古代ギリシア哲学者プラトン著作から、狂気の機能を理解することを試みる。2021年度は、この目的のために、プラトン対話篇『カルミデス』から、狂気と相対する正気に相当するソープロシュネー概念の分析をする予定であった。しかし、まず狂気の内実についての考察を先行させることにし、2022年度に予定していた、『パイドロス』篇での狂気分析を先に行った。この分析の成果として、古代ギリシア哲学専門学会における口頭発表を行い(「プラトン『パイドロス』におけるエロースと自己把握のかかわりについて」、第二十四回 ギリシャ哲学セミナー 2021年9月)、それを基とした論文が同学会のオンライン論集で公開された(「プラトン対話篇『パイドロス』におけるエロースと自己把握の関わりについて」、『ギリシャ哲学セミナー論集 XVIII』 31-48頁 2022年3月)。 この口頭発表と論文では、『パイドロス』における狂気の複雑な評価について分析した。本対話篇の前半部に展開される複数の演説では、エロース(恋)の狂気は理性を欠いた病として批判されるが、その批判演説に対して再批判がなされる。そこでは、哲学者がとりつかれるエロースの狂気は、当人を本質存在の探究へと向かわせる力を持つことが示される。英語圏での先行研究のいくつかは、理性的な存在であるはずの哲学者が狂気にとりつかれることを問題視し、エロースの狂気は、外部からの取り憑きと言う意味での伝統的な狂気概念を意味するのではなく、本人の本質存在への欲求に由来するものと理解し、一種の理性的狂気を読み取る。このような解釈をテキスト分析によって批判し、エロースの狂気は単純に理性的なものに還元することはできず、また恋の相手となる特定の他者を通じた自己理解に貢献するという内容を、テキストから明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画の順番を変更したが、2022年度に予定していたテキスト分析を先に行い、その成果を口頭発表と論文で発表することができた。2021年度に予定していた研究内容を2022年度、もしくは2023年度に行うことで、全体として研究計画は達成できると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
継続して、狂気理解に関連するプラトン対話篇を一作ずつ丹念に分析する。2021年度に、『パイドロス』におけるエロースの狂気を研究した結果、2023年度に予定していた『国家』における独裁者が持つエロースの狂気を分析するための材料がいくつか得られた(恋あるいは恋の神を意味するエロースに関する先行研究への理解、また、プラトンのエロース理解についての様々な先行研究による知見など)。そのため、2023年度に予定していた『国家』における狂気分析を先に行う予定である。
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Causes of Carryover |
当該年度に多数の研究用書籍を発注したが、コロナ禍などの要因により、発注に対する対応に様々な場面で遅延が生じた。また2021年度に計画していた海外での学会発表についても同様の理由から延期や中止をすることになり、当初使用を予定していた予算を実際には使うことがなかった。2022年度以降に国際的な状況を鑑みつつ、再度書籍の発注や海外での発表を、行う予定である。
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Research Products
(2 results)