2023 Fiscal Year Research-status Report
漢文資料を通じて見る『般若灯論』の成立と伝承-漢訳のテキスト校訂と再評価の試み-
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21K12839
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Research Institution | Kagawa National College of Technology |
Principal Investigator |
田村 昌己 香川高等専門学校, 一般教育科(詫間キャンパス), 講師 (60867555)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | バーヴィヴェーカ / 般若灯論 / プラバーカラミトラ / 漢訳 / 日本古写経 / アヴァローキタヴラタ |
Outline of Annual Research Achievements |
研究実施計画に沿って、以下の諸点にわたって研究を進めた。(1)定例の般若灯論研究会を4月から7月にかけて計4回オンラインで開催したのに加え、拡大版として般若灯論研究会2023を12月16-17日に龍谷大学で開催した。これにより、『般若灯論』を中心として、広く中観思想研究の最新の研究動向について参加の諸氏と情報交換したほか、小坂有弘氏の取り組む『般若灯論』第23章を参加者で検討し、多くの知見を得ることができた。(2)推論式説明箇所に焦点を当てて漢訳の翻訳上の特徴を分析した。その結果、漢訳の誤訳発生過程や論理学的知識の欠落などが明らかとなった。この成果については、次年度8月18-22日にオーストリア・ウィーンで開催される国際中観学会(International Conference: Madhyamaka in South Asia and Beyond)にて発表することが決定している。(3)『般若灯論』における他学派批判の全用例をピックアップし、漢訳とチベット語訳の相違や内容の分析を試みた。しばしば批判対象となるヴェーダーンタ学説について眞鍋智裕氏と情報交換を行い、今後の協力体制を確認した。(4)日本古写経を用いた漢訳のテキスト校訂に着手し、本年度は第22章の作業を進め、章全体の約三分の一について暫定的なテキストを作成した。当初は手探りの状況であったが、徐々に校訂のノウハウを蓄積しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
バイアウト制度利用も功を奏し、「研究実績の概要」で示したような、前年度以上の成果を上げることができた。しかし、前年度の「遅れている」状況から改善したとはいえ、当初計画に照らせば、全体としての進捗はやや遅れていると判断せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度も本研究課題のエフォート率を改善するため、バイアウト制度利用を継続して研究時間を確保する。そして、その研究時間を利用して、本年度着手できなかった他章の校訂作業などの諸課題に取り組み、研究の遅れを挽回する。
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Causes of Carryover |
前年度からの「次年度使用額」はバイアウト制度利用などで使用する予定にしており、実際にバイアウト制度利用による支出を行ったが、それ以外の物品費と旅費の支出が予定よりも抑えられたため、本年度も次年度使用額が生じることとなった。次年度は、海外での学会発表が決定しており、当初計画よりも多くの支出が見込まれることから、次年度使用額はその分の支出に充当したい。
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