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2022 Fiscal Year Research-status Report

Genealogical study of Western mysticism and the concept of experience

Research Project

Project/Area Number 21K12847
Research InstitutionThe University of Tokyo

Principal Investigator

渡辺 優  東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 准教授 (40736857)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
Keywords神秘主義 / 経験・体験 / ジャン=ジョゼフ・スュラン / パウロ / アウグスティヌス / ジェンダー・セクシュアリティ / ミシェル・ド・セルトー / ミシェル・フーコー
Outline of Annual Research Achievements

本研究の目的は大きく二つある。第一に、従来の神秘主義論の中心にあり続けてきた「体験」概念を問いなおすこと。第二に、近代主義的な「体験」理解とは異なる「経験」概念によって神秘主義思想史を照らし返すことにより、別様の神秘主義理解を掬い上げることである。より具体的には、体験/経験概念の哲学的・系譜学的な検討を軸として、中世以降の西洋霊性史の三つの重要局面における展開(①中世から近世にかけての宗教思想における経験知の生成、②近世から近代にかけての体験概念の伸長、③近現代における別様の神秘的経験概念の知脈)を見通すことが目的である。
研究計画の二年目である本年度は、初年度に引き続き、基礎的な文献資料の収集を行うとともに、体験/経験概念をめぐる近年の人文社会諸学における議論の動向の整理を中心に行った。神秘主義研究における体験/経験概念の問いなおしが、狭義の霊性史のみならず、今日の人文社会諸学の多領域に及ぶ大きな射程を備えた論点であることを確認した(学会発表1件)。
また、中世から近代にかけての転換期に活躍したフランスの神秘家ジャン=ジョゼフ・スュランについて、主著『経験の学知』を中心に、近年のパウロおよびアウグスティヌス研究の知見を踏まえつつ身体論・言語論・聖霊論の観点から新しい解釈を提示した(論文執筆2本、1本は掲載予定)。この過程で、近年の神秘主義研究のフロンティアであるフェミニズム、ジェンダー・セクシュアリティ論が本研究にとっても重要な知見を与えることを確かめた。
本研究課題の遂行に際しても一貫して参照されるべきミシェル・ド・セルトーの先駆的な神秘主義研究については、常に読みなおしを進めている(研究会発表1件)。
さらに、神秘主義とセクシュアリティ研究の交差するところを掘り下げるなか、ミシェル・フーコーの霊性論の意義に気づき、これについても新たな研究に着手した(研究会発表1件)。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初は必ずしも視野に入っていなかった論点や問題の広がりが発見されたことで、研究計画そのものにも見直しが要請されている。とくに、西洋の中近世以降の霊性史に三つの重要局面をみるという最初の見通しは、中世以前の時代についても一定の検討が要請されることが判明した結果、大幅な修正を余儀なくされている。また、ジェンダー・セクシュアリティ研究の知見についても、資料収集の段階で数多くの参照すべき文献が見つかった。研究の方向性が拡散しがちで、論文として成果をまとめきれなかったところが大きい。さらに、コロナ禍の影響で予定していた海外での調査を行うことができなかったことも、ネガティヴな要因に挙げられる。
しかしながら、本研究の軸となるスュラン研究やセルトー研究については着実に進展している。新たな論点や問題系の発見も、今後論文としてまとめていくことが期待できる。また、コロナ禍にあってもフランスの研究者とのやりとりは手紙やメールなどで随時行っている。来年度以降は、長らく叶わなかった海外での調査や発表も実施する予定である。
以上から、総合的にみて「おおむね順調に進展している」と判断できる。

Strategy for Future Research Activity

本研究の基本軸となる、神秘主義研究の鍵概念としての体験/経験概念の再検討とその射程の提示については、すでに行った学会発表をベースに論文としてまとめ、『宗教哲学研究』または『宗教研究』に投稿する。ほかにも、これまで各種学会や研究会で発表してきた事柄(スュランを中心に近世神秘主義における経験概念の奥行き、そこにみられる中世盛期以降の女性的霊性の影響、17世紀末の静寂主義論争などを主たる契機としての近代以降の経験概念の変容)について、それぞれ論文にまとめる作業を優先したい。
フランスの研究者とのコンタクトはつねに取っているが、引き続きさまざまな機会をみて助言を得ることで研究の推進力とする。国際学会や研究集会での発表も試みたい。
ミシェル・ド・セルトーの神秘主義論についても、論文の執筆に加え、刊行に向けて翻訳を進める。また、本研究課題の問題意識に基づき、西洋神秘主義の歴史を概観する単著の執筆を進める。

Causes of Carryover

コロナ禍により、出張旅費として計画していた予算の執行が当初の目論見より少なくなったため。次年度により多く計画している出張旅費に充当する予定である。

  • Research Products

    (5 results)

All 2023 2022

All Journal Article (1 results) Presentation (4 results)

  • [Journal Article] もうひとつの原典――「泥海古記」を読みなおすために2022

    • Author(s)
      渡辺優
    • Journal Title

      「原典」-教えの豊かさを汲み取るために-(2021年度天理大学学術・研究・教育活動助成 教理研究会報告書)

      Volume: 1 Pages: 13-36

  • [Presentation] 宗教概念批判以降の神秘主義研究あるいは霊性史研究の可能性 ――ミシェル・フーコーの主体性論と霊性(スピリチュアリテ)論からの展望2023

    • Author(s)
      渡辺優
    • Organizer
      龍谷大学国際社会文化研究所「宗教概念批判以降の宗教研究に基づく人間性の探究」プロジェクト研究会
  • [Presentation] 『西洋における宗教と世俗の変容』第一巻『カトリック的伝統の再構成』総論試論2023

    • Author(s)
      伊達聖伸、渡辺優
    • Organizer
      科学研究費補助金(基盤A)「西洋社会における世俗の変容と「宗教的なもの」の再構成――学際的比較研究」(研究代表者:伊達聖伸)A班第8回研究会
  • [Presentation] 神秘的経験の系譜学に向けて――新たな神秘主義理解のために2022

    • Author(s)
      渡辺優
    • Organizer
      日本宗教学会第81回学術大会
  • [Presentation] 第四の人、あるいは?――イエズス会士セルトーと危機の時代の教会論2022

    • Author(s)
      渡辺優
    • Organizer
      科学研究費補助金(基盤A)「西洋社会における世俗の変容と「宗教的なもの」の再構成――学際的比較研究」(研究代表者:伊達聖伸)A班第7回研究会

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Published: 2023-12-25  

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