2023 Fiscal Year Research-status Report
18世紀末から19世紀初頭の西洋芸術音楽における室内楽の楽器法の研究
Project/Area Number |
21K12868
|
Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
丸山 瑶子 東京藝術大学, 音楽学部, 研究員 (10897482)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 室内楽 / 楽曲分析 / 様式研究 / ピアノ / チェロ・ソナタ / ピアノ三重奏曲 / 音楽学 / 芸術学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2024年度には、2023年度に引き続きピアノ三重奏曲におけるチェロの旋律的使用を分析した。チェロが初出旋律を単独で担う箇所を調べた結果、成立年が早い作品にはあまり該当例が見られず、成立年が下るほど例が増す傾向にあることがわかった。そしてそうしたチェロの旋律的使用は、叙情的・歌唱的性格のセクションまたは楽章、および楽曲内の大きなセクションないし楽章冒頭に目立つことが明らかになった(2023年度音楽学会全国大会にて発表)。ただし23年度に分析対象とした作品には、ピアノ三重奏曲の創作数が多い作曲家数人の作品が欠けていた。したがって今後、検討を進めるため、年度末に行なった欧州調査で未取得だった作品の楽譜を一部収集した。 ピアノともう一つの楽器の室内楽については、ピアノとチェロのための室内楽作品の分析に着手している。分析においては上述のピアノ三重奏曲と同様に、チェロが初出旋律として現れる箇所およびその部分の音楽的性格を検討している最中である。現時点までの分析では、チェロ旋律がある旋律の初出時に旋律を担うのはピアノ三重奏曲と比べて多いように見受けられ、またその位置は楽想の性格を問わないように思われる。これは一見すると当然のことのように見える。しかしピアノ(クラヴィーア)以外の声部が「伴奏」と位置付けられていた状況に鑑みると、たとえどちらのジャンルでもチェロが「伴奏」と位置付けられていたとしても、作曲家の側ではピアノ三重奏曲と二重奏曲でチェロを別様に位置付けていた証左であろう。 以上の点に関し、チェロの響きや役割について様式変化の理論的裏付けとして、チェロ教則本など文書資料におけるチェロ旋律に関する言及も調査中である。 一方、弦楽四重奏曲に関しては、研究者が博士論文で検討したウィーンの演奏会状況および音響面の様式変化について再検討を行った。この作業は現在も継続中である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年に引き続き戦争による円安の影響で海外調査が資金上、困難となり、同じ理由で資料請求も難しい状況になっている。したがって年2回行うはずの海外調査が年1回となり、資料収集が捗々しくないとともに、国際学会での発表も難化している。さらに加えて、年度末に赴いた大英博物館がサイバー攻撃の被害を受けた状況で、出庫可能資料の点数と種類が大幅に制限され、閲覧の叶わなかった資料が多数に上った。 また、為替の影響により外国語のネイティヴチェックが必要となる海外学会論文への寄稿も積極的に行うには厳しい状況に立たされている。
|
Strategy for Future Research Activity |
現在(2024年4月時点)、上述のピアノ三重奏曲について、新たに入手した楽譜資料をもとに分析対象を広げるとともに、考察観点を加えて、さらに考察を深化させている(現状の研究成果について学会発表を予定している)。こののち、ピアノとチェロの二重奏曲に関する分析を進め、作品成立背景に鑑みて考察する予定である。 一方、様式変化に関わりうる美的価値観や、室内楽における「会話」の理念について言及した文献が1800年代にないかどうか、目下調査中である。特にチェロに関しては、当時の人々がチェロに対して抱いていたイメージや、室内楽において理想的と考えていた在り方を文書から辿ることができれば、様式変化を説明する理論的裏付けになるからである。今までに当たったチェロ教則本等には目ぼしい文言がなかったため、現時点の予定としては、新聞や雑誌等にある曲のレビューなどの記述も精査していく予定である。 弦楽四重奏曲に関しては、現行の分析・検討を続行する。
|