2021 Fiscal Year Research-status Report
An Interdisciplinary Research of Crossing Areas between Dance and Sport: For Historical Description and Critical Theory of Artistic Sport
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21K12872
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Research Institution | Kokugakuin University |
Principal Investigator |
町田 樹 國學院大學, 人間開発学部, 助教 (70896258)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | アーティスティックスポーツ / フィギュアスケート / 舞踊論 / クロスジャンル論 / 比較芸術 / 芸術批評 / スポーツ史 / 舞踊史 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、フィギュアスケートや新体操などの音楽を用いた表現行為が内在する芸術的スポーツにおいて、「競技(スポーツ)文化」と「舞踊(ダンス)文化」という異なる二つの文化が、いかに歴史的および美学的に相互交渉してきたのかを、初めて体系的に明らかにすることを目的とするものである。 2021年度は主に、1970-1980年代に勃興した英国のフィギュアスケーターであるジョン・カリーとポストモダンダンスを志向した舞踊家たち(トワイラ・サープやローラ・ディーン、エリオット・フェルド等)の協働創作に着目して、フィギュアスケートと舞踊をめぐるクロスジャンル研究を実施した。具体的には、彼らの作品とそれらにまつわる批評や歴史資料を網羅的に収集・分析し、その成果を舞踊学会の研究大会にて口頭発表した。カリーと舞踊家たちの協働自体が知られていなかった舞踊学領域において、はじめて芸術的スポーツと舞踊の両文化をめぐる相互交渉史を提示することができた。 また、上記の研究と並行して、スポーツと舞踊の両ジャンルをめぐる美学理論や批評理論を体系的に整理する研究にも着手した。現段階において、この研究は途上にあるが、両ジャンルの美学および批評に関する理論を比較検討する中で導き出した知見を、単著『若きアスリートへの手紙――〈競技する身体〉の哲学』(山と溪谷社, 2022年3月)の一部分に盛り込み発表した。従来、芸術的スポーツに関する美学論が皆無である中、本書ではスポーツとダンスの両要素を併存させなければならないアーティスティックスポーツに固有の美学論や創作論を考察することができた。 2021年度における主な研究実績は上記の二点である。当初計画されていた年度課題については、上記の実績をもっておおむね達成することができたと言えるだろう。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年目にあたる2021年度の研究計画は主に、①研究を遂行する上で必要となる備品を調達し研究環境を整えることと、②芸術的スポーツに関する国内外の研究や歴史記述、作品等を網羅的に収集・調査することの二点であった。 まず①の計画である研究環境の整備については、本科研費の助成を通じて、問題なく予定通りの備品を調達することができたため完全に達成されている。これによって、万全の体制で研究に取り組めるようになったことが順調に進展していることの理由の一つである。 そして②の計画については、近年飛躍的に発展しているデジタルアーカイブシステムを通じて、海外に行かずとも、文献や映像などの様々な媒体の資料を収集できるようになったことで、かなり作業が捗っている。②の研究については二年計画(2021-2022年度の計画)であるため、未だ網羅的な資料収集に至ってはないが、このデジタルアーカイブ環境を駆使すれば、万が一コロナ禍で海外出張が困難な場合でも、研究計画の遂行に必要な資料を相当集めることが可能になると考えている。 上記の理由により、当初予定していた通りの研究成果を出すことができているため、本研究の進捗状況を「おおむね順調に進展している」と評価する次第である。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画上、二年目にあたる2022年度は、昨年度に引き続き、芸術的スポーツに関する国内外の研究や歴史記述、作品等を網羅的に収集・調査する予定となっている。したがって、2022年度はこの当初の研究計画を遂行しながら、その成果を主に舞踊学会や比較文学会等での口頭発表および投稿論文を通じて発表していきたいと考えている。 とりわけ、「研究実績の概要」欄において記述したジョン・カリーと舞踊家たちの協働創作に関する研究は、芸術的スポーツと舞踊のクロスジャンル論を追究する本科研費研究の核を成し、なおかつ舞踊学およびスポーツ科学の両学問領域において革新的成果になるとの手応えを感じているため、最優先で取り組んでいく予定である。 また、来年度に米国コロラド州に設置されている「世界フィギュアスケート博物館」と、スイスのローザンヌに設置されている「オリンピック博物館」および「オリンピック・スタディー・センター」への資料調査を予定しているため、この資料分析を実施する上で重要なディシプリンや基礎知識を習得しつつ、調査の準備を行っていきたい。 なお現段階において、本研究を遂行するにあたり不測の事態は発生しておらず、2022年度も計画通りに進められると考えている。
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Causes of Carryover |
当初想定していた以上にデジタルアーカイブを有効に利用することができたため、2021年度の研究計画を遂行するための資料購入費を抑えることができた。とはいえ、今年度の資料調査研究を通じて、2022年度以降の研究を遂行するにあたり購入が必要な資料も明らかとなったため、翌2022年度分の助成金でそれらの資料を過不足なく調達していきたいと考えている。 また今年度は依然としてコロナ禍であったため、ほとんどの学会がオンライン開催となり、旅費・その他の経費が発生しなかったことも想定外の出来事であった。2022年度は学会等も対面開催となる見込みであるため、翌年度分の助成金を出張費等の諸経費としても有効活用させていただきたいと考えている。
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Research Products
(7 results)