2022 Fiscal Year Research-status Report
Interaction between Schelling's Philosophy of Art and his contemporary Arts
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21K12874
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
八幡 さくら 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (80773556)
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Project Period (FY) |
2021-11-01 – 2027-03-31
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Keywords | シェリング / 芸術哲学 / ドイツ観念論 / 造形芸術アカデミー / 造形芸術 / 神話 / 同時代性 / バイエルン |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は順調に進んでおり、研究過程で新たな発見もあった。今年度はイギリスを中心に国外の図書館および美術館でシェリングの芸術実践と同時代の哲学・美学・芸術に関する資料調査を行い、その成果を国内外の学会・研究会で発表し、学術論文として学術雑誌に投稿した。以下にその詳細を記す。 ロンドン大学ロイヤル・ホロウェイ校に研究滞在し、同大学主催の研究会への参加、英語圏におけるドイツ観念論研究に関する調査を行った。ケンブリッジ大学図書館では、シェリングの講義『芸術哲学』の聴講者による講義ノートの調査を行い、シェリング芸術哲学が同時代の人々にどのように受容されてきたのかを検討した。 2022年5月の香港中文大学主催の神話に関するオンライン会議では、シェリング芸術哲学における神話論からシェリングのオリエンタル観について報告し、本発表を論文として投稿した。同月カナダ・トロントのヨーク大学で開催された北アメリカシェリング協会第7回大会では、バイエルン王立造形芸術アカデミーでのシェリングの書記長としての活動を、アカデミーの規約草案やカタログなどの文献資料から紐解き、シェリングが同時代の芸術活動に教育という側面から寄与していたことを明らかにした。さらに同年9月にはクロアチア・ドブロブニクで開催されたシェリング・ゼミナールにおいて「シェリングを読むショーペンハウアー」という題でショーペンハウアーのシェリング『自由論』解釈について研究発表を行った。国内での学会活動として、ヘーゲル学会のフロンティア研究部会において、シェリング芸術哲学に関する一次文献編纂状況および近年の研究書について報告し、ヘーゲル美学との比較を行い、その発表原稿をもとに論文を執筆した。以上の研究活動を通して、国内外の様々な研究者と意見交換を重ね、最新の研究動向を探り、研究者間のネットワークを広げることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
世界的な新型コロナウイルスの大流行の影響で延期されていた国際会議の再開、対面での会議・研究会の再開などによって、研究者間の交流が再度活発になってきた。それを受けて、国内外の図書館等での資料調査、ならびに学会発表等の研究活動を円滑に進めることができた。ただし、2022年中に発表予定だった、ブラジル開催の国際美学会と、東京開催の国際シェリング会議については、新型コロナウイルスの感染拡大防止のため延期された。これら2件の会議は2023年に開催される予定であり、同会議での発表を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はシェリングの芸術哲学および芸術実践活動に関する文献調査を進め、さらにその研究成果を学会での研究報告と学術論文として発表する。 1) バイエルン造形芸術アカデミーの成立史と芸術教育の活動内容に関する調査の継続 バイエルン造形芸術アカデミーの成立史について、国内外の図書館および美術館で資料収集を行う。シェリングが関わった造形芸術アカデミー規約草案、1811年以降の展覧会カタログ、収集作品、芸術教育のカリキュラムを調査し、造形芸術アカデミーの理念と実際の教育活動の実態を明らかにする。さらにアカデミー設立の背景にある当時のバイエルンの政策や政治状況についても調査を進める。造形芸術アカデミーの理念と活動にシェリングと彼の芸術哲学がいかに寄与しえたのかを解明する。 2) 芸術哲学研究の展開と国際的な研究者ネットワークの構築 以上の文献・資料調査を通して得られた研究成果と海外における研究滞在の実績等を踏まえ、国内外の哲学・美学の学会で、シェリング芸術哲学と彼の芸術実践活動、ならびに哲学と芸術の交叉に関わる研究発表を行い、それをもとに学術論文を執筆し、学会誌に投稿する。具体的には、2023年7月にブラジル・ベロ・ホリゾンテで開催される国際美学会で研究発表を行う。10月にはカナダ・モントリオールで開催されるドイツ研究協会(German Studies Assoiation)の会議でシェリングのダンテ論について研究発表を行う。同年12月には日本・東京大学で開催される国際シェリング協会大会においてシェリングと同時代の画家P・O・ルンゲの思想的関係について研究発表を行う。こうした国際会議への参加と研究発表を通して、国内外の研究者と議論を深め、国際的な研究者ネットワークの形成を推進する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、2022年度中延期になった会議があり、出張費用分の未使用分が出た。この未使用分は次年度2023年に延期された会議の出張費として使用する。
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