2023 Fiscal Year Research-status Report
20世紀前半期のフランスにおけるタピスリー研究-国立ゴブラン製作所における刷新
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21K12879
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
岡坂 桜子 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (60843985)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | タピスリー / ギュスターヴ・ジェフロワ / ゴブラン / 美術史 / 美術行政 / 美術批評 / 装飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、フランスの国立ゴブラン製作所に関して、20世紀初頭に所長を務めたギュスターヴ・ジェフロワ主導による、タピスリー近代化への刷新運動の歴史的評価を検証することを主眼としている。本調査を進めるための具体的な手続きとして、二つの観点をもうけている。すなわち第一に、ジェフロワ所長時代の製作所の運営方針やその間製作された作品群の歴史的評価を、主に一次史料の掘り起こしや実作品の考察に基づいて、ジェフロワ以前・以後の製作所の歴史の中で相対的に捉えること、第二に、フランスの公的芸術の生成を担う国家機関として役割にその活動が規定・制限される製作所の活動を、同時代の私営工房の活動や個人メセナの支援によるタピスリー製作活動と比較検討することである。 5ヵ年計画の3年目にあたる本年度は、前年度に引き続き、研究の基盤となる資料収集とその整理・分析に注力した。本年度はフランスでの現地調査を再開することができたため、2023年7月のおよそ2週間の調査期間中に、フランス国立図書館での二次資料の収集のほか、国立古文書館において一次史料を閲覧し、ジェフロワ所長時代のゴブラン運営に関する公文書を網羅的に確認した。そのほかに、オルセー美術館資料室にて関連作家のアーカイヴにあたるほか、開催中の展覧会にて実作品を実見するなどした。これらの調査を通じて、1910年代から30年代のゴブラン製作所の運営に関する状況が判明しつつある。 本年度は、以上の調査結果として、所属学会にて口頭発表を実施した(「ギュスターヴ・ジェフロワと国立ゴブラン製作所―連作「フランスの諸地域と諸都市」にみるタピスリー再興の試み」日仏美術学会第172回例会、日仏会館、2024年3月30日(土))。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランスの国立ゴブラン製作所について、20世紀初頭の活動の歴史的評価に関する本研究は、概ね順調に進んでいる。本年度は、1、2年目に感染症拡大によって実施できなかった、フランス現地での調査が再開でき、本研究において必須となる一次史料の調査にあたることができたためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進方策としては、当初の研究方法や計画から大きな変更はなく、4年目も計画通りに進める。3年目の海外調査にて完遂することができなかった作業を4年目の早い段階で終わらせ、本年度より、調査結果のまとめの作業や口頭発表・論文投稿など、成果発表の機会を増やしていきたいと考えている。
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Causes of Carryover |
1,2年目の海外調査費として想定していた費用を繰り越したが、使いきれなかった。これについては、主に次年度以降の海外調査費に回したいと考えている。
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