2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K12881
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Research Institution | Tokyo National University of Fine Arts and Music |
Principal Investigator |
安藤 さやか 東京藝術大学, 大学院美術研究科, 研究員 (90807504)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 彩飾写本 / ヨーロッパ初期中世 / 写本画 / カロリング朝美術 / 典礼用写本 / 詩編挿絵 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の対象作例はカロリング朝期の詩編や黙示録、その他典礼用の挿絵入り写本のうち、音を想起させる描写のある例である。2021年度は本研究課題の初年度にあたるため、文献と画像史料の収集に充てた。 1. 西欧初期中世美術・写本学関係の最新の専門文献、特に過去5年以内の国際会議の論集を中心とする学際的な研究動向の先行研究の読解に充てた。それとともに、音楽史分野の研究協力者からの助力を得て、中世音楽史分野の先行研究の国内外の文献をリストアップしている。 2. 研究対象とする写本のうち、これまで既に多くの画像史料を集めていた詩編や黙示録写本に加え、本年度は典礼用写本の一種である『サクラメンタリウム(秘跡書)』の挿絵の例を中心に収集し、その中途段階にある。典礼用写本の挿絵の中でも、朗唱、楽器等の音の描写に関わると推測される図像について、先行研究での図像解釈の議論を精査中である。特に、図像例の多い9世紀半ばのサクラメンタリウム写本《ドロゴ典礼書》(パリ、国立図書館、Ms. lat. 9428)についてはモノグラフィックな研究が多い為に、同写本を足がかりにして関連作例に関する先行研究や画像史料を集めることができた。 調査対象写本の制作当初の使途を考察する為には、原資料調査を行い、制作に関わった書記家・画家の区別、折帳等に関する観察が必要である。しかしCOVID-19の影響により欧州に渡航しての調査が出来ておらず、各写本の状態の詳細については不足情報を残している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はCOVID-19流行の長期化を見越し、当初より海外調査を予定しなかった。従って、文献と画像の収集をおおむね順調に進めることができた。ただし、海外の研究図書館に滞在することができていない為、欧州の未刊行学位論文や、国内に所蔵がなく入手困難な文献資料(所蔵館写本目録、地方誌、教会出版物等)に関してはやや不足がある。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、関連作例の画像史料を収集しつつ、典礼用写本群の挿絵の類型化を行う。また、写本挿絵に於ける楽器の描写の分析の参考とするため、工芸作品としての同時代のオリファント(角笛)に関する文献の読解も進めていく。 更に2022年度内には、ドイツおよびスイスの研究図書館・文書館に訪問しての原資料実見調査を行い、挿絵の下書きや書体の区別などの観察を予定している。ただし、日本から欧州への渡航困難、ないしは受け入れ機関の都合により調査困難な状況が起これば、年度内の原資料調査に基づく詳細分析は断念せざるをえない。実見調査の代替策として、特殊撮影(UV・X線等)依頼による資料調査を行うことを検討している。また、実見調査な場合には、図像解釈等の実見調査を必ずしも必須としない方法論での分析を優先して進める。
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Causes of Carryover |
COVID-19の流行長期化により一時的なオープンアクセスの電子ジャーナル等が増えたこと、学術目的のための史料撮影代(出版用を除く)が無料あるいは安価で済んだため、少額の次年度使用額が生じた。今後、海外出張時の燃料や外国語文献の送料の高騰が見込まれる為、次年度使用額はこれに充てたい。もし、2022年度も渡航困難な状況が続き海外研究図書館での調査が難しい場合は、予算は画像史料特殊撮影費、および外国語論文執筆の際の校正・校閲費に充てる予定である。
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Research Products
(2 results)