2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K12882
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田中 水萌 神戸大学, 人文学研究科, 人文学研究科研究員 (70844984)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 絵巻 |
Outline of Annual Research Achievements |
後白河院が蓮華王院の宝蔵に収集した絵巻物については多くの先行研究の蓄積があるが、新出資料による指摘や詞書の解釈など、新たな指摘もなされている。本研究においては、宝蔵の絵巻物群ひとつである「六道絵」と関連深い作品である「辟邪絵」「地獄草紙断簡」勘当の鬼図を中心に取り扱い、絵巻制作当時の治病の方法や辟邪の信仰といった面から、改めて作品の制作背景を考えたい。さらに院の近臣らによる仏画をはじめとする図像の収集という視点から、「辟邪絵」の詞書の典拠や図像的源泉を明確にしたうえで、後白河院周辺における絵画制作の様相を明らかにすることを目指す。 具体的には、後白河院や建春門院をはじめ院の近臣らがどのような社寺に参詣したか、またそれらの人物の関わった法要や奉幣、造寺、造仏、絵画制作などについて先行研究をもとに整理を行った。さらに今年度は、福井県立博物館にて原本が後白河院政期に制作された、現在明通寺が所蔵する「彦火々出見尊絵巻」の巻四から巻六の三巻を実見した。本絵巻においても多くの先行研究があるが、とくに龍宮という異界、龍の眷属という異形の様子を描くこと、また御産の様子が描かれることに注目して調査を行った。 御産の場面については「六道絵」と関連深い作品である「餓鬼草紙」にも描かれる場面であり、そこで行われる辟邪の行為については今後とも調査を続けていきたい。 また院政期における信仰の様態、とくに神仏についての解釈などは、大江匡房による著述が影響するのではないかと考えられ、匡房の著作がどの程度、後白河院やその周辺に受容されていたのかについては今後の課題とする。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定の調査が行えず、計画通りに進められていない。
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Strategy for Future Research Activity |
行えなかった作品の調査を、来年度には可能な限り進めていく。
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Causes of Carryover |
予定していた調査がすべて行えなかったため、次年度に可能な限り調査を進めていく。
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