2021 Fiscal Year Research-status Report
Santa Casa and Its Iconographical Changes related to the Loretan Veneration: Focusing on the Immaculate Conception
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21K12886
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Research Institution | Tohoku Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 有美 東北学院大学, 文学部, 講師 (50898434)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロレートの連祷 / ロレートの崇敬 / サンタ・カーザ / マリア論 / 無原罪の御宿り |
Outline of Annual Research Achievements |
科研費第一年目(令和3年)は、基本文献の継続的な読み込みに加え、コロナ禍で渡欧が困難な中(大学により禁止)、入手可能な書籍を追加購入し、「ロレートの崇敬」の中心人物であるマリアをより理解するための調査・活動を行うことに焦点を当てた。具体的には、PAMI(ローマ教皇庁立国際マリアン・アカデミー)主催の国際研究会における発表(2021年9月)、また「英語講読」授業におけるマリア関連書籍の講読である。前者においては日本の美術史学界におけるマリア研究の概要を報告し、後者では賛否両論のある Marina WarnerのAlone of Her Sex(1976, 2016)とTimothy Verdon神父による Mary in Florentine Art(2003)を用い、マリアにかかわる主要教義の理解と崇敬の拡散について知見を深めた。 加えて一年目の研究の目標であった「ロレートの崇敬」と「ロレートの連祷」のかかわりについての研究を進め、その成果は、2022年度(令和4年、6月頃を予定)中に東北学院大学のキリスト教文化研究所の紀要所載の論文として出版される予定である。いかに「ロレートの連祷」が誕生し、マリア崇敬の普及と共に「無原罪の御宿り」の図像と関連づけられ発展していったのかについて、概要をまとめたものである。とりわけ時代を追うごとに変化・拡張していった「ロレートの連祷」の主な要素を「無原罪の御宿り」のモティーフとの関連性から論じた。 さらに、本研究のきっかけとなったフィリッポ・リッピのスポレート大聖堂内陣壁画の論文が本年度中にMitteilungen des Kunsthistorischen Institutes in Florenzから出版予定(vol. LXIV, no. 1)である。 以上、主にマリアの全体像と「ロレートの連祷」に着眼した研究を一年目には進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ感染症による配送物の大幅な遅延や、郵送の中止などにより、専門書であればあるほど入手が困難な中、友人・知人の協力を得て書籍や論文の入手となったため、通常より調査に時間を要した。また新任教員として採用され、新規の授業が8コマ、オムニバスも合わせると合計10コマの授業の一からの準備と研究環境の整備や開拓に追われ、研究が思ったように捗らなかった。 実地調査が基本となる図像学研究において、コロナ禍で渡航ができず、思うように情報を入手できなかったこと、さらに新たな環境での研究開始となったため、研究の進捗状況に響いたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究計画としては、「祈りと美術」について焦点を宛てた授業を中心に、さらに祈りについての考察を深める。同時に、祈りと歌(Akathistos)、フランチェスコ会とサンタ・カーザの関係についての調査を行う。すでに言及したように、「ロレートの崇敬」には無原罪の御宿りの崇敬の要素が複雑に絡み合い、それは図像や祈りにおいて見ることができる。フランチェスコ会はこの教えを推進したばかりではなく、「受胎告知」の図像を用いて、推進者が見れば理解できる図像の注文を繰り返していた。そこでサンタ・カーザにかかわる図像とフランチェスコ会との関係を、現存する作品や史料から検証を進める。とりわけ実際にロレートを訪問したことで知られる歴代の教皇(パウルス2世、シクストゥス4世)とのかかわりを考察するため資料を読み進める。 さらに可能であれば、実際に現地に赴き、写真資料や実地調査により、類似の図像を有する作品で未だ知られていないものがあるかどうかを調査する。その上で、図像学的な発展について検討を行う。 しかしコロナ感染症や政治的状況により困難だと判断された場合には、前述の検討を推し進めることとする。
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Causes of Carryover |
必要な経費は支出することが出来た。残額については次年度の書籍費等調査のために利用する予定である。
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