2021 Fiscal Year Research-status Report
Art collection and outflow by the Ueda family, a lumber merchant called Fuyukiya-focusing on commercial and cultural activities-
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21K12889
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
宮武 慶之 同志社大学, 研究開発推進機構, 嘱託研究員 (30760087)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 冬木屋上田家 / 鴻池家永岡家 / 尾形光琳 / 酒井抱一 / 喜田武清 / 山崎武陵 / 池田孤邨 / 七艸庵教覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は七艸庵教覚による『宇米廼記』に注目し、江戸時代後期の冬木屋上田家の活動を、酒井抱一や喜田武清といった江戸の絵師との交流から着目した。本年度の研究は、幕末時点での冬木屋本家所蔵品の把握と、以前の流出および江戸時代初期のコレクション形成を考える上で重要と位置付けられる。 1)文政期 冬木屋本分家、酒井抱一、鴻池屋儀兵衛の三者の視点から、当時の冬木屋の状況を研究した。冬木屋と抱一の関係では、抱一は冬木屋本家当主七代目喜平次に所蔵作品の拝見を願ったものの、一日限りで作品数も限定的な拝見にとどまった。抱一と鴻池屋儀兵衛の関係では江戸の地廻り酒問屋鴻池屋儀兵衛の歴代を明確にし、抱一と親しくした成美の美術品蒐集には抱一が大きく関与していた。鴻池屋と冬木屋の関係では沽券調査によって江戸南茅場町にあった鴻池屋の土地は、冬木屋分家小平次の土地跡であった。七代目喜平次の周辺では、姻戚関係と共に抱一や新たな収集家である永岡家の存在が重要であることが確認できた。 2)嘉永期 教覚が冬木屋本家で拝見した作品の記録である『宇米廼記』を基点に周縁を論じた。当主は八代目喜平次であり、教覚のほか武清や山崎武陵への多くの所蔵品の拝見を許している。七代目喜平次の抱一への対応とは異なり、絵師の所見を必要とした当時の冬木屋の状況を検討した。特に江戸時代後期の冬木屋では「隠心帖」(重要文化財)、中興名物「蔦細道硯箱」(重要美術品)、尾形乾山筆「梅松図」を所蔵しており、依然として多くの作品所有が確認できた。このことは江戸時代後期に同家は没落の過程にあったとする従来の見解とは異なる。さらに七艸庵の日記によれば、嘉永期に冬木屋で行われた光琳忌に、教覚は一度だけ参会しており、江戸時代後期の光琳顕彰に冬木屋が果たした役割には大きなものがあった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
冬木屋所蔵品の多くは文献資料で確認できる一方で、七艸庵教覚『宇米廼記』は、絵師でもあった教覚によるスケッチや、「蔦細道硯箱」に至ってはプロッタージュが所載される。つまり江戸時代後期に、一部ではあろうが冬木屋が確実に所蔵した作品の記録となる。資料としての重要性に鑑み、江戸時代後期の冬木屋の周辺を注目し、周縁を明確にすることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度の研究対象は冬木屋本家七代目喜平次より八代目の活動であったため、次年度では時代を遡り、四代目喜平次より六代目の活動に着目する。さらに当時の本分家の関係をより明確にすることで、材木商である冬木屋が守成の時期となった状況を、経営面および美術品の収集面から検討する。
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